暴れん坊本屋さん+番線|元書店員・久世番子による本屋エッセイ漫画

マンガ家兼書店員である久世番子先生による本屋さんの本音や裏側を描いたエッセイ漫画。全3巻。書店が舞台の漫画って最近増えていますが、やはり番子先生を超えるキャラクターはいない。「暴れん坊本屋さん」は抱腹絶倒の実録漫画だ!

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あらすじ

書店の児童書担当の番子さんは本屋で働きながら漫画を描いている。自分の漫画を大量発注してみたり、POPを描いてみたり、こっそり棚差しから平積みに陳列を変えてみたり、職権乱用甚だしくもなんとか「少年愛の世界」を売ろうと画策するが同僚のハチさんに阻止されてしまう。

暴れん坊本屋さんの魅力

マナーの悪いお客を呪い、注文した本が届かず怒る「暴れん坊本屋さん」である番子先生が本屋さんの黒いネタをユーモアを交えて描いている漫画。

番子先生の苦悩

遡ること数年前、新米時代にコミックスの立ち読み防止商品保護のため「シュリンク(=袋詰め作業)」にせいを出す番子先生。

ひたすらシュリンクに没頭し、いつの間にか店がオープンするも終わらない……。

いつの日か自分の単行本が出たら自分の手でシュリンクしようと心に誓い、シュリンク道を極め神の領域に到達。

その後、自らの本を美しくシュリンクするという夢は叶ったが、本が売れぬ……。

「あんたたちに私の何がわかるって言うのよ‼︎ 来る日も来る日も出勤の度に、もりもりに平積みされて一向に減る気配のない自分の本を見る気持ち‼︎」

それが3ヶ月も続いてしまった悲劇……。

頑張れ!番子先生。

そんな番子先生が書店員として働きつつ、漫画を描いていたのだがら面白さ倍増!

また、番子先生の書店員ならではの苦悩も笑えるのだ。

カバー付け、珍タイトルの本探し、万引き犯、新刊の品出しなどなど、本屋さんの戦いは終わらない!

番子先生とハチさん

やはり、番子先生の先輩書店員であるコミック兼ボーイズラブコーナー担当のハチさんとの掛け合いが「暴れん坊本屋さん」の一番の魅力。

ハチさんは職場で唯一番子先生の正体を知っており、番子先生のサイン会にしれっと客を装って登場したり、ファンレターを書いてぬか喜びさせてみたり、返本を盾にツッコミまくるチャーミングな女性だ。

中でも一番笑えたのがハチさんが苦悩するシーン。

エロもおまかせ‼︎現役腐女子のハチさんが、当店ではなぜかマッチョや鬼畜系のBLの売れ行きが良いことに気づき、売り場担当として客の求めに応じ濃い肉色の棚を作り上げるも、「店員の趣味なんじゃない〜?」とお客様に笑われてしまう。

ショックを受けて夕日を背に走り去るハチさん……。

「私ちゃんとわかってるから‼︎ハチさんが好きなのは王子さまモノなんだってこと‼︎」

売れる本と売りたい本は別物であるといことがヒシヒシと伝わってきて、ほぴっとんもハチさんに追いすがりたい気持ちにさせられました。

「暴れん坊本屋さん」は本屋さんの苦悩と魅力がパンパンに詰まった笑える漫画!

番線

「番線〜本にまつわるエトセトラ〜」は書店での「あるあるネタ」を描いた「暴れん坊本屋さん」から、さらに踏み込んで本の奥深い世界を取り上げた漫画。

番線のあらすじ

漫画好きなら誰しもが経験する本の貸し借りにまつわるトラブルや子どもの頃に思い込みでエロいと思っていた本についての小さなあるあるネタから、専門的すぎるお仕事の現場までのん気な番子先生のゆるいツッコミにハマる。

写植職人さんや校正さんの仕事ぶりや、本の修復の現場、辞典編集者の戦いなどマニアックな本関連のお仕事の内情が知れる。

特に、番子先生の語りで国会図書館の舞台裏が知れて良かった。

火災はガスで消火、地震は書架が柱になっているので本は無事。たとえ人が死んでも本が生き残る設計という恐るべき優先順位。

しかし、国会図書館は次の世代に本を残すことが使命なのだ!

デジタル全盛の時代ですが、やはり紙で本を伝えていくことは大事だなと感じました。

本棚を巡る戦い

ほぴっとんが共感したのは「本棚戦線異常なし」で描かれている本棚の収納についての戦いですね。

全体的に歪んだみちみちの本棚。

棚板が外れているぱんぱんの本棚。

常にキャパを超えた本棚相手に作戦会議。ほぴっとんもいつも脳内でやりますよ。

領内に攻め入る新刊5冊に対して、既刊を後退させるか?いや、シリーズものは前線に……。完結作を戦線離脱させるか?いや、完結した作品は読み返す率が高い……。

我が軍の戦力の要を外すと士気に関わる。よし、横積み作戦だ!焼け石に水か……。

こんな決死のやりとりをいつも大人買いの奇襲攻撃によって台無しにされるのはほぴっとんも日常の風景ですよ。ものすごい既視感。

ほぴっとんももちろん同盟国と組んでいますよ。友と漫画を共有しています。進撃の巨人など友が持っている漫画は買わない。

ハチさんのようにほぴっとんも本棚をやめた時期もありましたし、スライド式の本棚は重すぎてスライドできない始末……。

現在は奥行きが深く漫画を3列入れられる特注の棚に収納しています。

もうね。プロフェッサーですよ。棚のサイズを見たら入る漫画の冊数がわかるようになりました。

本当に漫画が多すぎて困ってはいるのですが、作戦会議がやめられなくてねぇ……。

この戦いは終わることがない……。

まとめ

書店員さんというと文系のイメージが強いお仕事ですが、意外とハードワークでパワー勝負!しかし、本好きが集まって楽しそうな職場ですな!

「暴れん坊本屋さん」を読んで書店で働いてみたいと思った方も多いはず……。

久世番子先生は本屋さんの魅力を伝える伝道師的存在だ!