シュトヘル 西夏文字を巡る熾烈な戦いを描いた歴史漫画・完結!

「皇国の守護者」で知られる伊藤悠先生による漫画。全14巻、完結済み。

西夏の文字を後世に残すためにユルール悪霊・ シュトヘルが逃避行する話。

13世紀とか西夏文字とか蒙古とか……。ほぴっとんの好物ではないか……。

2017/5/12に最終巻の14巻が発売。読むべし!

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あらすじ

13世紀初頭。史上最強と言われる蒙古軍から恐れられている西夏国(タングート)の女戦士「悪霊=シュトヘル」。

蒙古軍に属するツォグ族の皇子・ユルールは敵国である西夏の文字に魅せられ、行く末を案じている。

一方、現代の日本でリアルな戦火の夢に悩まされる須藤は転校生の少女・スズキと出会うが……。

シュトヘルの面白さ!

「シュトヘル」はキャラクターの設定が秀逸!

ほぴっとんが一番面白いと感じるポイントです。

13世紀の中国大陸と現代の日本が交錯しながら展開するSFチックなストーリーにハマる!

悪霊=シュトヘルとは?

蒙古(モンゴル)軍による西夏国侵攻が激しさを増す中、非力な西夏の一兵士・すずめ(ウィソ)は仲間たちと生きて首府・興慶で会おうと約束するが、ツォグ族によって殲滅される。

運よく?ただ1人生き残ったすずめは無残にも城壁に晒された仲間たちの屍に群がる狼との攻防を経て超人的な戦い方を身につけ「悪霊=シュトヘル」と呼ばれるようになります。

そして、仲間の仇として指揮をとった「虎の男・ハラバル」を憎しみ続けるのです……。

ユルールの複雑な生い立ち

一方、主人公のユルールはツォグ族の皇子でありながら、憂うのは攻められた町が焼き尽くされ何百年も伝わってきた物が消えゆく様であった。

ユルールはツォグの族長の次男ですが、実はかつてツォグがモンゴルに負けた際に族長は嫁さんを大ハン(テムジン / チンギス・ハン)に奪われてしまいました。その翌年に生まれたユルールは大ハンと同じ瞳を持っています。

ユルールの母親は出産後に亡くなったので、ユルールは兄・ハラバルの母親で西夏から嫁いできた玉花(イファ)に育てられます。

??? わかりやすく説明……。

大ハンの命令でハラバルは母親の国・西夏を滅ぼして、大ハンの息子・ユルールはハラバルを仇と狙うシュトヘルとともに西夏の文字を残す旅に出ます。

実の息子が西夏の滅びに加担して、憎いモンゴルの血を受け継ぐ育ての息子・ユルールが西夏の生きた証を守ろうと一族を捨てる。

この皮肉なキャラ設定がのちに「ヤベェ。泣いてしまう……。」という感涙エピソードを生むのです。

大ハンの目論見

大ハンは侵略する過程で、西夏の文字に関わる全ての存在を焼き払います。もう執拗なぐらい……。それだけでは飽き足らず、もう文字そのもの殲滅しにかかってきます。恐ろしい執念ですが、大ハンには西夏の文字を根絶やしにする理由がありまして、作中で語られるときに「あーーー。」となんとも言えない気分にさせられますよ。

また、大ハンの部下・ヴェロニカが曲者……。

金髪碧眼の元修道女であるヴェロニカが物語の緊張感を生みます。

彼女と大ハンが秘める闇の深さが恐ろしい。

こそこそ裏で立ち回るヴェロニカが「シュトヘル」をさらに面白くしています。

西夏について

13世紀初頭の中国大陸が舞台となっている「シュトヘル」ですが、世界史を専攻していない方にとっては聞き覚えがない国なのでは?

一応、さっとですが西夏について紹介しておきます。

西夏(自らは大夏と称する)という国は1038年・中国の宋の時代にチベット系タングート族が中国北西部に建てた国で、1113世紀にかけて東西交易の利を得て繁栄しました。

この西夏建国の時代における中国の覇権というのは短いスパンで変遷していて、うっかりすると訳が分からなくなります。

チベット系の吐蕃に圧されてオルドス地帯に移動したタングート族は宋に服属しつつやがて独立します。

東は宋、北は契丹(遼)、西は吐蕃に挟まれていますが、 遼が衰退すると東方に起こった金に次第に圧迫され、さらに北方から蒙古(モンゴル)による西夏侵攻が始まります。

わお!何個国が出てきたのかしら?

これらの国は皆、民族が違いますからね……。複雑……。

西夏は西夏文字という独自の複雑な文字を持っていました。この西夏文字は国の滅びとともに砂漠の中に埋もれてしまったと言われています。

さて、「シュトヘル」の世界では西夏文字はどのように語られるのでしょうか?

時代背景を頭に入れて読むとより理解が深まります。

シュトヘルの感想

超個人的な話なのですが、ほぴっとんは女真文字と契丹文字の造形が好みでして、世界史の時間はキラキラして授業を受けていましたから、主に数学の授業中にこっそりと世界史の資料集を出して、ノートに女真文字を模写するおかしな奴でした。

(ちなみにかわいい系ではチベット文字とグルジア文字が好み)

そういった訳で、西夏文字も模写経験があるものだから、とても愛着がありまして……。

国が滅ぶとその国の固有的な文化は失われ、またそれらを記した文字が後世に伝わらないと歴史から消えさってしまいます。

文字の消滅で2度死ぬ……。

文字が引き継がれず誰からも理解されなくなると、ある意味その国は2度目の死を迎え悠久の歴史に埋もれていきます。

「シュトヘル」では西夏の文字を西夏を滅ぼす蒙古の大ハンの息子であるユルールが大夏の魂である「玉音同」を引き継ぎます。そして西夏の文字盤「玉音同」のために一族を捨てたユルールの存在は、皮肉というか歴史の奥深さを感じます。

破竹の勢いでユーラシア大陸を席巻する蒙古(モンゴル)軍に露と消される西夏という史実がわかっているだけに、ユルールが背負うものの重たさに胸が痛くなる漫画です。

まとめ

燃えるような赤い髪が印象的なシュトヘルですが、女性である彼女の中に現代人の男・須藤の意識が入り込むという設定としては非常に面白い展開を見せます。

しかし、うっかりすると急転直下に変遷する物語に置いてけぼりを喰らいます。

ですから、こちらサイド・読み手である我々も小走りの体制で「シュトヘル」に臨まなければなりません……。

モンゴルや中国の王朝を舞台とした漫画はありますが、西夏という国をメインに持ってきた漫画はほぴっとんも初めて読みました。

西夏サイドからモンゴルの侵攻を目にするという、他では味わえない感覚が非常に面白味がある作品です。

祝!完結。(残念ですが……。)西夏文字を巡ってのバトルに心が震える漫画!