「町でうわさの天狗の子」は「金の国 水の国」で「このマンガがすごい! 2017」オンナ編1位を受賞した岩本ナオ先生の作品。全12巻、完結済み。
町でうわさの天狗の子である刑部 秋姫(おさかべ あきひめ)が人間の男の子に恋する話です。
あらすじ
刑部 秋姫は人々に信仰されているお山の天狗・康徳坊(こうとくぼう)の一人娘。
秋姫は他の子よりちょっと力持ちで食いしん坊ですが、普通の女の子です。
訳あって天狗になる修行をしている幼馴染の榎本 瞬(えのもと しゅん)からは天狗になるように口うるさく言われるが、そんなことよりも秋姫は片思い中の神谷 武(かみや たける)が気になるのだった……。
町でうわさの天狗の子の魅力
ほぴっとんは基本的にこういったテーマを扱う場合、妖怪や物の怪は畏怖すべき存在であって欲しいので、ちょっとフィットしないかな?と思っていたのですが、2巻から拍手したいぐらい面白くなってしまったのです。
天狗の子・秋姫
秋姫の母親が変な人で、もともと年上の男性がタイプなのですが夏祭りで恋に落ちたのは450歳上の天狗でして、枯れ専にもほどがある!
そして、人間のお母さんと天狗お父さんの間に生まれたのが秋姫です。
秋姫は普段はお母さんと山の麓の町で暮らしていて、週に一回お山の上のお父さんに会いに行きます。
一応、「緑峰山太郎坊秋姫」という天狗名も持っていて「太郎坊」と呼ばれています。
秋姫は脱輪した2トントラックを軽々と持ち上げるほどの猛者ですが、外見は普通の女の子です。
その怪力を生かした職に就け(例えば天狗とかね)と思いますが、これ凡人の発想……。
山岸凉子先生の「アラベスク」にありましたよ。
他者を圧倒する才能に恵まれた人ほど、あっさり自分の地位を手放すものだと……。
秋姫はナチュラルボーンで天狗の力を秘めていましたが、普通の人間であることを望みます。
秋姫のようなタイプが自分の才能に気がついて努力し始めたら恐ろしいことになるよ!
だからこそ「町でうわさの天狗の子」の結末を見届けねばならぬ……。
岩本ナオ先生がすごいよ!
秋姫は天狗が敬われている「緑峰町」で暮らしています。
緑峰町の人々は天狗という奇異な存在を自然と受け入れている田舎の町で、天狗の娘という感情移入が全くできそうにもない女の子を主人公にもってきて、それでいて共感させるという力技をサラっと描く岩本ナオ先生の手腕に感動した。
田舎だからってなんでものんびり・おっとりしている訳ではありませんからね。
現実感のある田舎の生活描写にトラブルが降ってくるストーリーが本当に楽しい。
家族だったり幼なじみとの関係が少しづつ変化しながらも変わらないところが女子の心を打つ漫画。
序盤の展開からは想像もつきませんでしたけど、結末に泣かされると思っていませんでしたよ。
岩本 ナオ先生がすごいよ!
ほぴっとんのように1巻で「う〜ん?」と思っても試しに2巻までどうぞ!
個性的なキャラクターが登場するので本当に面白くなります。
のんびりしたラブコメから一気に壮大な展開になって、秋姫の成長よりも途中から岩本ナオ先生の覚醒を見守る漫画になってしまうほどですよ。
まとめ
基本的に恋愛モノはあまり読まないほぴっとんですので、耐性がなく初々しい初恋のときめきをむず痒く感じましたが、絵柄がさらっとしているので助けられました。
田舎が舞台のためか、なぜか懐かしい気分にさせられる漫画です。
「緑峰町」よりもほぴっとんの町の方がはるかに田舎のくせに本当になぜかしら?
同じく岩本ナオ先生の作品で、過疎化が進む地元の役場にUターン就職した銀ちゃんの青春を描いた「雨無村役場産業課兼観光係」(全3巻)も面白い!