笑う吸血鬼|これぞグラン・ギニョール!丸尾末広愛あふれる感想

これぞグラン・ギニョール!「笑う吸血鬼」丸尾末広先生による美しき吸血鬼の物語。エログロナンセンスかつ退廃的耽美さの融合。これらを漫画で味わうには丸尾末広先生作品の他にないでしょう……。

新装版となって登場!手に入りやすく場所も取らなくなりました。全2巻。

グロ耐性がない方は引き返してください!

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あらすじ

ガード下で占いをしている不気味なババア「駱駝女」から素質を見込まれ闇の眷属となった美少年・毛利耿之助。耐え難い陽の光と抑えようのない渇きに苦しむ毛利は駱駝女のパートナーとなり連続殺人を重ねるようになるが……。

笑う吸血鬼の魅力

秀逸なキャラクター

主人公の毛利耿之助(こうのすけ)が持つなんとも怪しい魔力。思春期特有の閉塞感が如実に現れた表情。

永遠の時を生きることとなった毛利が次第に闇に染まっていく姿が耽美である一方、生首でお手玉をしはじめたりとお茶目な一面が笑いを誘う。

また、「笑う吸血鬼」は脇を固めるキャラクターがとても素晴らしい。

妊婦である姉の腹をボコっとコブシで殴りつけ、ラリった目で「みんな吸血鬼よ!」と捨てゼリフを吐く潔癖症、中学生にしてはやけに艶っぽい宮脇留奈

連続放火魔をこじらせた異常者、同級生の辺見外男(そとお)。悪夢にうなされる日々を悶々と過ごしている辺見少年は自らの悪事を「笑う吸血鬼」というタイトルの日記につけている律儀な性格でもある。

毛利をはじめとして、三者三様の狂気に蝕まれダーティな世界に堕ちていく面々の厭世観たるや、何ともいえない叙情的な手法で見せてくれます。

また、駱駝女がどのようにして吸血鬼となったのか?昔話のくだりがシュールで刺さる。

「大地はこの体を受け入れてくれない。これこそ吸血鬼の証」と超カッコつけて訴えかけてくるも、垂れた乳で新生児の吸血風呂に入っているからそっちに気を取られて全然共感できない……。

良いシーンなのに爆笑のポイントとなってしまった。

お気に入りのシーン

上記の駱駝女の一件もそうだが、「笑う吸血鬼」には絵になるシーンが多い。

・毛利耿之助の吸血

ほぴっとんが一番好きな場面はやはり毛利耿之助がリビドー(欲望)を静かに暴走させたシーンだ。

留奈の美しい首筋に吸血欲をおぼえるも邪魔が入り、その足で百合が咲き乱れるのどかな線路脇で別の女の血をすする毛利。

血走った瞳に蝶がたかるシーンが凄惨なのですが、ただただ美しい……。

・辺見少年の血ゲロ

とうとう留奈への殺人欲が爆発した辺見少年は、留奈の太ももをガラス片で切り裂き血をすするのだが、辺見少年はゲロを吐くのですよ。

「なんという幻滅!」

↑超名シーン!超名シーン!

普通興奮が高まるでしょ。はぁはぁするでしょ!ゲロゲロゲロって……。

勝手に幻滅し、大日本帝国と書かれた窓からビルの隙間に留奈を投げ捨てて逃げるとか、丸尾末広先生は天才だ!

・クライマックスシーン

毛利耿之助、留奈、辺見少年の3人の運命が絡まり合う「笑う吸血鬼」の結末は本当に圧巻です。

絵の構図も完璧ですが、人物のポーズもキマっている。指先まで吸血鬼臭が漂うほどです。

もっと語りたいところですが一応、ほぴっとんのブログはネタバレなしですので、ご自身の目で見て堪能ください!

まとめ

「笑う吸血鬼」は丸尾末広先生にしてはグロ度もエロ度も低めで、マニアとノーマルのボーダーあたりになんとか踏みとどまっている漫画。

ストーリーは特にマニア向けともいえないのだが、絵は思いっきりアブノーマルだ!

好みが分かれる漫画ですので、スピリチュアルアタック(精神攻撃)に弱い方は夢見が悪くなるので避けたほうが無難。

異ジャンルへの扉を開いてみたい方は、入門編として読んでみてください……。

B5版もあります。