ほぴっとん待望の巨匠・山岸凉子先生によるバレエ漫画「舞姫 テレプシコーラ」。第11回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞作。第1部は全10巻、第2部は全5巻で完結済みです。
山岸凉子先生がバレエ漫画を描くと知って買わないわけがない‼︎待ちに待っておりましたよ、ほぴっとんは‼︎
舞姫 テレプシコーラ
あらすじ
小学5年生の篠原六花(ゆき)は姉の千花とともにバレエ教室を開く母からバレエを習っていた。
そんなある日、六花のクラスに少年のような佇まいの転校生・須藤空美がやってきた。
彼女もまた六花と同じくバレエを習っているようだが……。
テレプシコーラの魅力
テレプシコーラってなんぞや?ネフェルピトー(HUNTER×HUNTER)の念能力「黒子舞想」かと思いますけど、太陽神アポローンが率いる9人のミューズの一人で合唱詩と舞踊をつかさどる女神だそうですよ。
成績優秀で才能があり、しかも母からの期待も大きい姉を持つ六花。一見すると「アラベスク」のノンナなのですよ。往年のファンは興奮しますよね。
山岸凉子先生のバレエ漫画の魅力といえば、人間の内面です。
ある日、六花ちゃんは股関節のソケットが深いため180度の開脚ができないとお医者さんからいわれてしまう。
180度開脚できないとバレエは正しいポーズにはならないのです。
“踊りたい人がバレエを踊るのじゃなくて、選ばれた者のみが踊れるのがバレエなのよ”
なんたる過酷さ。ほぴっとんなんて90度も足開かないよ……。
六花ちゃんがなんだか遠い親戚の子みたいで、つい応援したくなるようなキャラクター。
六花ちゃんの成長物語も楽しみですが、山岸凉子先生ですからそうは問屋が卸しません。
なんと、姉の千花ちゃんが靭帯断裂するという悲劇。
才能にあふれ努力を惜しまない子であっても、成長期にブランクを抱えるということはプロのバレリーナの道は閉ざされたも同然。
バレエ一筋で生きてきた千花が下した決断とは……?
号泣必至のクライマックスに胸が痛い。
また、いじめの問題であったり、アル中やDV、親が子供に児童ポルノ出演を強要するなど、ゲスな展開とバレエを絡めた非常に独創的な作品となっています。
舞姫 1―テレプシコーラ (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
テレプシコーラ 第2部
ほぴっとんは個人的に第2部の方が好きなのです。
甘ちゃんで、五嶋先生から「鎌足!」と罵られていた六花ちゃんがローザンヌですよ、皆さん‼︎
ローザンヌといえば若手バレエダンサーの登竜門といわれています。
テレプシコーラでは舞台裏どころかローザンヌに向かう空港から物語がスタートしますから、臨場感バッチリです。
案の定、茜ちゃんが風邪を引いていたり、これからのトラブルを予感させる立ち上がり。
細やかなバレエの世界を十二分に満喫できる漫画‼︎
テレプシコーラ/舞姫 第2部1 (MFコミックス―ダ・ヴィンチシリーズ)
ヴィリ
ヴィリ あらすじ
バレエ団を経営する東山礼奈は、本公演にも匹敵する意欲的な発表会として「ジゼル」全幕を企画。IT企業の社長・高遠和也をパトロンに得た礼奈は、精神的にも経済的にも充実した状態で稽古を始めるが……。
山岸凉子 メディアファクトリー ヴィリより
ヴィリ(Wilis)とはクラシックバレエの代表作として知られる「ジゼル」に登場する、結婚直前になくなった女性が精霊になったもので、一般的にはウィリーと呼ばれています。
ヴィリは怖い漫画ですよ。もはやホラーな展開が目白押し。
少々ネタバレを含みますので、ご注意を‼︎
43歳のバレエダンサー礼奈が主人公である時点で、もう山岸凉子節を期待しますよね。
発表会を控えレッスンに勤しむ礼奈には、背丈もテクニックも伸び悩んでいる年頃の娘「舞」がおり、母親として複雑な気持ちでいる。
そんな中、礼奈がいる限りどんなに才能があっても主役は張れないため、喧嘩別れした教え子の内永真実が礼奈のバレエ団に戻ってきた。
ドイツのバレエ団でプロのダンサーとして5年間踊っていた真実の実力に若干の焦りを感じた礼奈だが、ジゼルはテクニックだけでは踊れないと奮起する。
くしくも同じミルタを演じることになった三船は真実の踊りを見て落ち込むのだが、礼奈は内心無理もないと同情心を寄せる。
高遠に対する真実の態度に嫉妬心を隠せなくなった礼奈は、高遠から食事の誘いを受け、結婚の期待を寄せて出かけるのだが……。
ここからネタバレです‼︎
なんと礼奈は高遠の口から娘の舞との結婚を許してほしいと言われるのだった……。
ヒャー。この展開は予想の範疇を飛び越えていますよ。
ジゼルのヴィリに重ね合わせて女の情念が渦巻く様を線の細いタッチで表現している。さらにそこに、暗い負の感情で次第に軋み始めるバレエの世界が加わってより恐ろしい。
物語終盤のミルタのシーンは恐怖で背筋が凍りましたよ。
ホラーな展開から一転、礼奈の回想のシーンでは人間味を感じる結末になっていて、読後は温かみ与えてくれる漫画です。
言霊
言霊 あらすじ
心と言葉。あまりに密接な関係。
バレリーナを目指す16歳の澄は、ライバルたちの言葉に、動揺する日々を送っている。
本番に弱いというメンタルを克服しなくては、夢をつかめない。
そう思った澄は、ここから抜け出す方法を考え始める……。
山岸凉子 講談社 言霊より
私は偽善者という言葉から始まる「言霊」はバレリーナのメンタルを描いた作品。
山岸凉子先生の作品にしては可愛らしい漫画。マイナス思考をプラスに変換させる思考。バレエだけでなく日常生活にも役立つマインド術です。
同時収録の「快談・怪談」が面白かった。
ほぴっとん好きなんですよ。山岸凉子先生の又聞きの怪談話。いつも目の焦点があっていないデフォルメされた先生もキュートですしね。
まとめ
「アラベスク」の中で語られていたことですが、ヴィリの礼奈のように年齢を重ね表現の円熟期に差しかかった頃には、肉体が追いつかないと……。
そして、技術はまだまだだがテレプシコーラの六花ちゃんのように若くして才能の片鱗を見せる子や、言霊の澄のように弱いメンタルを克服する子もいて、そんな若い子たちと一緒に舞台に上がって踊るなど恐ろしいことだ。
この3作でバレリーナの一生を見るようですな……。
テレプシコーラの第3部を猛烈に期待‼︎