天人唐草|負の暗示 日本史上最大の無差別殺人を描いた衝撃の漫画!

山岸凉子先生による、かの「八つ墓村」のモデルともなった「津山30人殺し事件」をモチーフに描かれたショッキングな物語「負の暗示」

ありきたりなパニック系サスペンス漫画とは一線を画す傑作作品!

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負の暗示 あらすじ

昭和13年・5月某日、漆黒の闇の中で凶行に及ぶ1人の男。戸数30に満たない山間の僻村を襲った日本犯罪史上最大の大量殺人事件。なぜこのような惨劇が起きたのか?数少ない資料をもとに負のサイクルに囚われた男の生涯を描く……。

おそるべし!負の連鎖

些細な負の連鎖の積み重ねが平凡な男を鬼に変える! 山岸凉子先生の心情描写が表現する狂気に震える……。

土井春雄という男

大正6年に生を受けた土井春雄は両親を結核で亡くしたため祖母と姉との3人で山間の僻村・K村に移り住みます。

幼少期に母のぬくもりを知らずに育った春雄は祖母から「できが違う」と溺愛されており、学校でも級長として優越感を持っていた。

しかし、ずっと級長を通していた春雄だったが級長の上級職である総長には別の人が選ばれ、プライドを傷つけられます。

次第に「何事につけても自分が一番であるべきだ」という全能感を強めていく……。

病弱を理由に中学への進学を断念した春雄。実際はお金がなかったからなのだが受け入れられずにいた。

その後、春雄は農作業もそこそこに無為な生活を送り、K村の風習でもあった「夜這い」にハマり女性たちとの肉欲に溺れていった。

そんな中、軍国主義をつき進んでいた日本による徴兵検査で丙種となった春雄は自分を支えていた何かが崩れ去ってしまったことに気づくのだった……。

負のスパイラル

全能感によって優越に浸っていた春雄にとって丙種合格は屈辱的な結果であり、小馬鹿にしていた男たちが優秀な甲種合格であるのは、やはり自分が病気だからだと思わなければ精神を保てなかった。

ショックのあまり本当に寝込んでしまったため、重病の肺病患者であるというイメージが村に蔓延し村中の女たちから無視される春雄。

他人が思えば大したことのない劣等感だが、自分が人並み外れて優秀であると思い込む春雄にとっては貧乏で病気な上に丙種という現実は耐え難いものであったのだろう。

村の女たちからのいじめ的な仕打ちに鬱積した感情を爆発させるも、報復を胸に秘めた途端にさざ波のように引いていく静謐な表情。

穏やかな微笑みの中に潜む狂気に背筋が凍りそうになる……。

やはりこういうシーンは山岸凉子先生でないと描けないなと感服してしまう。

収録漫画・要注意!!

「負の暗示」というタイトルの漫画はありません。ご注意ください!

天人唐草 (山岸凉子スペシャルセレクション 5)の中に収録されています。

文庫版の天人唐草 自選作品集には収録されていません。要注意!!

↓こっちダメ。載っていない!

間違って購入しても傑作だらけなので損はしませんが……。

ほぴっとんは「神かくし」の方を持っています。

神かくし 収録作品

・神かくし

・神入山

・負の暗示

・黄泉比良坂

・夜の虹

こちらもハズレなしに面白い!

天人唐草

「天人唐草(てんにんからくさ)」はこれまたとんでもない傑作ですぞ!

ほぴっとんが「負の暗示」「天人唐草 (山岸凉子スペシャルセレクション 5)版でおすすめする理由は、収録作品が天井をぶち抜くほどの名作揃いであるからです。

天人唐草 (山岸凉子スペシャルセレクション 5) 収録作品

・天人唐草

・銀壺・金鎖

・シュリンクス・パーン

・負の暗示

・悪夢

・星の素白き花束の

・蜃気楼

・流々草花

中でも、表題作の「天人唐草」を「負の暗示」とともに読んでほしい。

天人唐草 あらすじ

旧家の1人息子である厳格な父親から「女とはこうあるもの」と厳しく育てられた岡村響子。

失敗を恐れやり直すことができない彼女は自分を押し殺すように従順であろうとする。そんな響子に待ち受ける悲劇的な落とし穴とは……?


男尊女卑な父親から女の理想像を押し付けられ、それを美徳として生きていた響子

しかし、それは同時に自ら行動を起こさないことで自己犠牲を払わずにすむという甘えでもあった。

他人からの低評価を恐れるあまり萎縮する響子は自分の男性観が歪んでいることに気付かず、ある日衝撃的な事実を知ることになります。

その同じ日に響子の価値観を崩壊させるような悲劇が連鎖して起こるのだが……。

「負の暗示」の春雄は鬱積した感情を他者に向けたが、「 天人唐草」の響子は自己に向けます。

本当にどちらも悲惨なストーリーで、考えさせられます。誰かが負の連鎖を断ち切ってくれていたならこのような壮絶な話にはならなかったと思ってしまった。

読後感はぐったりしますが、読み応えのある素晴らしい漫画!

まとめ

これらの漫画をサスペンスというカテゴリーに入れていいものか迷いましたが、モロ緊迫していますからね。「いいかな?」と思いまして……。

最近はスプラッタ系のサスペンス漫画が多いですが、山岸凉子先生作品のように精神的なエグさがある漫画って滅多にない。

古い作品ですので「舞姫 テレプシコーラ」と比べるとタッチが少女漫画していますが、男性にも読んでほしい漫画です!