宗像教授について語ったなら「妖怪ハンター」のことも紹介しておかねば……。
その前に、ほぴっとんと諸星大二郎先生との出会いについて記しておきましょう。
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諸星大二郎先生との出会い
もともと名前を知っていたわけでも、誰かから薦められた訳でもありません。
偶然であったのか?必然であったのか?ふらっと立ち寄った本屋で目に止まって手にしただけのこと。
悪い孔子の話かしら?と思って完全にタイトル買いした「孔子暗黒伝」でしたが、1ページから引き込まれてしまいました。
なぜなら、その時ほぴっとんはインド哲学にハマっていたからです。
つれだつ友なる二羽の鷲は 同一の木を抱けり
その一羽は甘き菩提樹の実を食らい他の一羽は食らわずして注視す-
「リグ・ヴェーダ」謎の歌(辻直四郎訳)
(諸星大二郎 孔子暗黒伝 集英社文庫より引用)
孔子の話かと思ったところに リグ・ヴェーダ?
この讃歌がラスト、ズドーンと腹にきます。
孔子暗黒伝 あらすじ
紀元前495年、中国で赤気(オーロラ)と共にあらわれた不思議な子供・赤(せき)。
時を同じくしてインドで生まれたアスラは 赤の影であった。
運命に引き寄せられるように出会った二人は仏陀の導きによって一人の人間として生まれ変わる…。
読後、これはとんでもない漫画に出会ってしまったと震えながら「暗黒神話」を買いに走りましたよ。
暗黒神話 あらすじ
主人公の武はある日、父の古い友人である小泉から10年も前に亡くなった父親が実は殺されていたことを聞かされる。
父の残した遺品を手がかりに父が亡くなった場所へ来た武は、以前諏訪であった謎の老人・竹内から甲賀三郎の人穴を案内されるが……。
インド哲学と密教にベクトルが傾いているちょうどその時に諸星大二郎先生と出会うとは、運命的なものを感じずにはいられない!
選ばれた者=アートマンとは
「暗黒神話」「孔子暗黒伝」は全宇宙の鍵をにぎる選ばれた者=アートマンを巡る壮大な話だが、そもそもアートマンって何よ?となりますよね。
梵(ブラフマン)と我(アートマン)は日本語で梵我一如と訳されます。
永遠に存続する個人の本体(アートマン)と宇宙の根本原理(ブラフマン)はそれが本質として同一のものである。
ウパニシャッド哲学においては「アートマンはブラフマンである」と端的に表した。
この考え方がインドの思想における根幹となっています。
言葉尻では理解できるのですよ。梵我一如について……。
しかしほぴっとんよ、観念的に理解できていますか?
「できていたら、それ悟っちゃってるから!」
このように超越的なインドの宇宙論を諸星大二郎先生は独自の解釈で深く追求されています。
衝撃のクライマックス
「暗黒神話」のラストは芸術作品だ。
武は 五十六億七千万年後の未来で弥勒になったのかもしれない……。
(諸星大二郎 暗黒神話 集英社文庫より引用)
竹内の先行きも気になるが、武はどうなるんだ!という興奮がおさまらない。
武が決断する時、複雑に散りばめられたピースが集約し見たこともない景色が描かれる。
「孔子暗黒伝」のクライマックスも甲乙つけがたい……。
ヒラニア・ガルバ何を夢見ている?
(諸星大二郎 孔子暗黒伝 集英社文庫より引用)
円環状に流れる神々の時間「ユガ」と黄金の胎児・ヒラニア・ガルバ。
ヒンドゥーの宇宙創造をラストに持ってくるとは……。
クライマックスのシーンを描いてもちっともネタバレにならないほど難解なストーリーですが、燃える。
想像を絶する宇宙観をほぴっとんなどがうまく説明できませんよ。1巻完結とは思えないほど圧巻の作品。
ちょっと驚きのお値段で完全版となって復活した「暗黒神話」。
100ページ以上の加筆修正が加えられている。新作というよりは諸星大二郎先生のファンブックであります。
(諸星大二郎先生ファンのための一冊。ファン以外は普通に文庫版買う)
「うッ!」となる価格だが、ほぴっとんのための漫画でしょ!買うしかないわ……。
諸星大二郎の魅力とは?
伝奇漫画のカリスマである諸星大二郎先生は、そのイマジネーションはなに由来?と思わされるほどの独自の世界観と画風で知られています。
それゆえ、ほぴっとんにとっては諸星大二郎先生の存在が怪奇だ。
諸星大二郎先生の作品を読むと、いつも説明のできない不思議な感覚に襲われる。
天下一武道会があるわけでも、全国大会を目指すわけでもなくドラマティックな展開が期待できない作風であるにも関わらず、コアなファンを唸らせる手腕に長けているのだ。
しかも、絵が下手なのに絵になるシーンが多すぎて痺れる!
「暗黒神話」で異形の神と化した「タケミナカタ」と「オオナムチ」の造形がやばすぎる!
神話をモチーフとした作品は数多くありますが、誰もこんな風に神を描けませんよ。
学んでから読め!
諸星大二郎先生の作品は予習してから臨みましょう!
それだけの価値がある漫画です。
ウパニシャッド哲学・ヒンドゥー教・密教・論語・天文学。これらはややハードルが高いかもしれませんが、より理解が深まるので文献にチャレンジしてみてみましょう。
日本神話やヤマトタケル、邪馬台国については山岸凉子先生のお力をお借りしましょう。
・月読―自選作品集 (文春文庫―ビジュアル版)
・ヤマトタケル (山岸凉子スペシャルセレクション 10)
・青青(あお)の時代 (潮漫画文庫) 全3巻
解釈は違いますが、読んでおいて損はありません。というか読むべきです。超絶面白い!
ほぴっとんも勉強して読み返しましたから……。そしたら涙が溢れました。感動のあまり……。
まとめ
信じられないことに少年ジャンプで連載されていた作品ですよ。
この素晴らしさがじゃリン子に理解できるとは思いません。なんて無謀なことを……。
ほぴっとんが生まれる前に発表された作品ですが、大人になってから出会って本当によかったと思います。
パズルのようにギチギチに詰め込まれた棚とは一線を画す殿堂入りの書架に奉っているにも関わらず、うちの馬鹿家族は目もくれやしない!