「百鬼夜行抄」はほぴっとんの大好きな今市子先生による妖怪漫画です。
奇妙なものが見える少年・飯嶋 律を主人公とした妖とのおかしな日常を描いた作品。
あらすじ
怪奇幻想小説家である飯嶋 蝸牛(かぎゅう・本名は伶)は河童や鬼などの妖怪話を好んで書いていましたが、まるで見てきたかのようなその作風が小説を書くために妖魔と取引しているのではないかという噂がたつほどリアルで人気を得ています。
実際に蝸牛は冥界から8匹の妖魔を呼び出して従えるほどモロに霊力が強く、道教や陰陽道にも精通していました。
遺伝とは恐ろしいもので、主人公の飯嶋 律は祖父・蝸牛から不思議な力を受け継いでしまったため他の人には見えない妖の姿や不可思議なものが見えてしまいます。
しかし、妖が見えても祓えないことを心配した蝸牛は律のために護法神として青嵐に律の身を生涯守ると約束させます。
青嵐は蝸牛の命令で、律が四歳の時に心臓発作で亡くなった父・孝弘の肉体の中に入っています。
「百鬼夜行抄」はそんな律が霊力の高さゆえに妖怪や霊的なもの相手に様々なトラブルに巻き込まれる話となっています。
キャラクター
飯嶋 律 (いいじま りつ)
祖父・蝸牛から強い霊力を受け継いだため生まれつき霊感があり、見て会話することはできるが対抗策を持っていない。「じゅけんせい」から「ろうにん」にジョブチェンジするなど、事あるごとに妖魔に茶々を入れられなんとも不運な生活を送っている。
飯嶋 司 (いいじま つかさ)
蝸牛の長男の娘。名前で律と勘違いされることもある。律ほど霊感は強くないが憑依体質。律の母と祖母からは律の嫁にと望まれているが、父・覚は猛反対している。
広瀬 晶 (ひろせ あきら)
蝸牛の長女の娘。霊感が強いため「恵明大のシャーマン女」と呼ばれている。厄介なヤツに惚れ、厄介な奴に惚れられる女。
青嵐(あおあらし)
美しい龍の姿をした妖魔で、律の父・孝弘の体を住処にしている。人間の体を維持するためにブラックホールのごとき食欲の持ち主。今先生は無意識に自身のお姉さまをモデルにされたか?(5巻のあとがき漫画より)
あくまでも青嵐と契約を交わした主人は蝸牛なので、律の命令はまるで無視だが、律と一緒にいることで大物の妖魔を喰らえるのでお互いにメリットはある。
尾白と尾黒(おじろ・おぐろ)
律の使い魔である烏天狗の妖魔。なんとメスだった尾白とオスの尾黒は兄妹だが非常に仲は悪い。霊力が弱まるので昼間は普通にかわいらしい鳥になる。一応人間に変化できるがオールドスタイルであるため使い物にはならない。(特に尾白)
律のことを「若」司のことを「姫」と呼んで懐き酒盛りばかりしている。
本当にしぐさがかわいい。
霊感は強いけれど力がない蝸牛の孫たちは妖魔にとってはカモですね。この3人が厄介ごとを引き連れてきて不可思議な事件に巻き込まれます。
百鬼夜行抄の魅力
「百鬼夜行抄」の面白いポイントは蝸牛の霊力が分散された家族関係に尽きます。
律は飯嶋本家の跡取り息子ですが、蝸牛の長男の息子ではありません。
茶道教室で生計を立てる律の母親・絹は飯嶋家の三女です。
本来は跡継ぎである飯嶋 覚(司の父)は長男ですが、蝸牛譲りの霊感体質であるため実家を「バケモノ屋敷」と毛嫌いして家に寄り付きもしません。
そして同様の理由で次男の飯嶋 洸 、長女の広瀬 斐、次女の飯嶋 環も用事がなければ実家を訪れず、三男の開は失踪中で26年間消息不明になっています。
そのために末っ子である絹が家を継ぎ、律と祖母の八重子+青嵐(父さん)で「バケモノ屋敷」に暮らしています。
八重子はいわゆるゼロ感という奴ですね。霊が全く見えない。だから蝸牛は八重子を妻に迎えるのです。
絹は見えているのかなと感じることもありますが、こういうタイプは霊が一番苦手とする相手でしょうね。ある意味飯嶋家最強の能力。
家に魍魎が押し寄せ律がドタバタと走り回る中、八重子と絹はのほほんとしている。
絹は何かとトラブルに鉢合わせする事もありますが、本人は無自覚なので結局律が始末をつけるのです。
この霊感のあるなしで描かれている対比がクスッとさせられるポイントでもあり「百鬼夜行抄」の魅力。
妖怪は退治しない
飯嶋家はじいさんのせいで妖怪がジャンジャン集まってくるおばけ屋敷なわけですが、自宅で茶道教室を開いているので生徒さんに紛れて妖怪が家に入ってくることもあり、律は気が抜けないのです。
広い家に住んでいる人間は3人で、父さんの正体は青嵐ですし、尾白と尾黒も縁あって庭の木に住んでいます。
しかし、見た目以上に賑やかな家です。(見える人からしたら)
律は霊感はあっても妖怪退治はできない普通の人間です。
青嵐や尾白と尾黒の力を借りながらうまくやり過ごす作戦を敢行しています。
幼少期に奇異の目で見られた経験から霊感はないと公言していますが、どこに行ってもすぐに飯嶋 律はやばい奴だと噂されてしまうため友人から霊的な相談を受けることもあります。
何もできないからと断るのですが、必ずそのトラブルを持ち帰る引きの強さがすごい!
のちに、その霊力を見込まれ本職から声がかかったりするので笑えます。
まとめ
かなりホラーな展開の話もありますが、青嵐や尾白と尾黒の強烈な個性と間の抜けた家族のおかげで恐怖ブルブル度は低めになっています。
今市子先生のユーモアのセンスにほぴっとんはいつも感服させられる。
よって、ホラーよりなファンタジー漫画だとほぴっとんは認識しております。練りこまれた完成度の高いストーリーながら1話完結のストーリーで読みやすく素晴らしいです。
独創的な妖魔のビジュアルもかっこいいですし、着物が美しいので堪能してほしい。
律の幻想的な日常生活を味わえる怖くて笑える漫画!