「それでも世界は美しい」は椎名橙先生によるラブファンタジー漫画。
パパ王から「太陽王が世界征服しちゃって自治の代わりに娘よこせっていうからどうする?」と言われた4姉妹がじゃんけんで勝負を決し、負けた末っ子が軽いノリで嫁いじゃった話。
あらすじ
東方にある謎の鎖国国家「雨の公国」の第四公女・ニケは雨を降らせる能力を持っていた。嫌々ながらも国のために「晴れの大国」の太陽王・リヴィウス一世に嫁ぐことになったが、出会った相手は子供だった……。
無慈悲さと冷血さで世界を征服した悪名高い太陽王・リヴィウス(愛称・リビ)から、雨を見たことがないし太陽に飽きたからという、またしても軽いノリで雨を所望されたニケは青筋を立ててクソガキの頬をひねしりあげます。
しかし、逆にその暴挙を気に入られ牢に入れられる始末……。
下級階層の母が暗殺されたために虚無感漂わせる瞳をしたリビに対し、ニケは雨を求めるならばとりまく世界の美しさを実感させろと迫る。
そんな最中起きたリビ暗殺未遂事件をうけて三行半を突きつけられたニケは「雨の公国」へ戻る道中に王宮から火の手が上がる光景を目にする。
渇きの中にいる小さな王に、それでも世界は美しいと伝えるためにニケは想いをのせて歌うのだった……。
それでも世界は美しいの感想
友から面白いと薦められて読んだのですが、正直フィットしませんでした。
スイマセン……。
世界が美しく見える漫画との触れ込みでしたので、ハードルをあげすぎたのかもしれませんね。
ほぴっとんはどうにもニケが少々品位に欠ける点とリビがじゃリン子すぎた点が引っかかりまして、いくらファンタジーとしても無理がある設定に入り込めませんでした。
即位してたった3年で世界を征服って、どんだけ狭いんだ? 地球規模ではないよな。リヴィウス一世>チンギス・ハンとか、ちょっと受け入れ難い。
超強国の子ども王に嫁ぐ弱小国の姫という設定に年齢差・身長差を加え、少女漫画の王道としてのストーリー展開は良いと思いますが、ピンチに雨降らして解決・チャンチャンで大概の事態を収束させるならもっとニケを敬え貴様ら!となりませんかね?
「それでも世界は美しい」はリビが親を殺されたことでやさぐれて半ば腹いせのように独裁化して世界を征服、無慈悲な太陽王となりますが、アメフラシの余興で呼びつけたニケと出会い、彼の曇った心をニケの歌が晴れやかにしてくれる話です。
心が曇るという言葉があるように、普通は心が痛んだり闇を抱えている場合に雨をイメージしますよね。日本人からすると雨の方が暗く、晴天の方が気持ちが清々しく晴れやかになります。
しかし、「晴れの大国」は一滴の雨も降らない国であるため、慈雨が奇跡的な光景となり我々が感じる雨上がりの気持ちが洗われるような爽快感を味わうことができるのだろう。
この逆転の発想がリビの瞳に映った美しい世界を見ることに一役かっている。
まあ、リビの心が美しいということですね。
それにしては下品な姫が世界をぶち壊しているとは思いますが……。
自治と引き換えにアメフラシという貴重な能力を持った姫を嫁がせるなら、それなりの養育義務がありますよ。パパ王……。
ニケが姫である必要性を感じません。
むしろ、ニケが元気さだけが取り柄のクソ田舎の町娘で実は雨を呼べることを知ったリビが雨が降らずに立ち行かなくなった国のためにニケを「晴れの大国」に迎える方がしっくりきます。
「晴れの大国」は雨は降りませんが治水対策が万全なので、アメフラシはまさしく余興となってしまった残念さ……。
また、リビが世界を征服する必要性も感じません。
本当にこんなクッソガキンチョ〜が世界を統治するのなら、もっと蛇蝎のごとき宰相とか人間の皮を被った悪が魑魅魍魎めいてひしめきあわないと整合性が取れなくないですか?
しかし、それでは「それでも世界は美しい」の優しい世界観を確実に壊します。
この2人が統治する国に魅力を感じられず、本当にもったいない漫画……。
まあ、婚期を逃した女が読む漫画ではなかっただけの話。
まとめ
読書芸人でもあるピースの又吉さんが「面白くない本なんてない。今の自分にとって読むタイミングでなかっただけだ」とおっしゃっていて、とても素晴らしいことを言うなぁとほぴっとんは感服いたしまして、確かに読み返して面白さに気付く漫画ってありますよ。
それからほぴっとんも面白くないという言葉を漫画に対してかけることをしなくなりました。
フィットしないだけ……。今の自分の精神状態に合わなかっただけだと……。
大の漫画好きである友があれだけ面白いというのだから、いつかほぴっとんにもそう感じられる時が来るはず……。
実はまだ10巻までしか読んでいませんし、完結したら読み返します。
厳しい意見となってしまいましたが、巷での評価はすこぶる高い作品。
「それでも世界は美しい」は心が優しくなるほんのり暖かい漫画であることは確かです!