タイムスリップやらタイムリープやら、時間を止めてみたり心臓を共有してみたり……。能力によってストーリー展開の幅がいい方に広がった漫画をご紹介。
兎にも角にも世界設定が斬新すぎるサスペンス漫画をまとめてみました。
横浜線ドッペルゲンガー
玉木ヴァネッサ千尋先生によるタイムスリップクライムサスペンス漫画。全4巻。
「横浜線彫刻家連続殺人事件」の容疑者・剣崎マコトは無罪を訴えるも死刑執行されてしまう。
しかし、死刑執行と同時に事件が起こる前にタイムスリップしてしまったマコトはまだ起きていない事件を防ぎ、真犯人を見つけだすために過去の自分を「相棒」にするが……。
11年前に横浜線沿線にて起きた連続殺人事件の25日前にタイムスリップしたマコトは自分を地獄に突き落とした真犯人をぶちのめしたいが、相手は完全犯罪を成し遂げた凶悪犯。
犯人を追うには探偵でも警官でもない元彫刻家のマコトにはハードルが高く、協力者が必要だが信用ができない。
そんな中で唯一信じられるのは過去の自分。
「自分」と「自分」のタッグで未来を変えろ!
彫刻家だけに彫刻で未来から来た自分の存在を認めるくだりが笑えた。
しかし、ドッペルゲンガーではないよな……。タイムトラベラーだと思うのですが……。
どんでん返しにつぐどんでん返しでジェットコースターサスペンスだよ。全4巻と読みやすいし、絵も美しい!
衝撃のクライマックスに慄く漫画!
僕だけがいない街
師匠である「ジョジョの奇妙な冒険」の荒木飛呂彦先生からまったく推薦されていない帯で話題となったクライムミステリー漫画。全9巻。
「再上映(リバイバル)」と呼ばれるタイムリープ能力を持つ売れない漫画家の藤沼悟は、母親殺しの犯人として追われることになる。リバイバルで母の殺害を防ごうとするが、少年時代を過ごした1988年に戻ってしまう……。
売れない漫画家の愚痴からスタートする「僕だけがいない街」は自分の意志とは関係なく時間が巻き戻ってしまうタイムリープの能力を持った主人公が、 リバイバルで誘拐を未然に防いだことで母親を殺され犯人に仕立て上げられてまう話。
そして、2006年から1988年タイムリープした悟は無関係に思える現在の事件と18年前に起きた同級生誘拐事件が繋がっていると確信する。
悟は過去と現在の2つの事件から大切な人を救うことができるのか……?
タイムトラベルではなくタイムリープという能力設定がとても良かった漫画。
謎解きというよりはSF色の強いサスペンス漫画だと勝手に判断いたしました。
異能力を持つがゆえに友達とのギャップを感じる悟の孤独と未来を知っていたとしても失敗を繰り返すリアルさが素晴らしく、卓越した感情表現に引き込まれる漫画。
しかし、個人的には三部けい先生作品の中では「鬼灯の島」の方が好き!
刻刻
堀尾省太先生のデビュー作。全8巻。
水木しげる大先生が80点をつけた作品ということで期待大!
ぐうたらな男どもに代わって家庭を切り盛りする失業中の長女・佑河樹里。
ある日、兄の翼と甥の真が誘拐され、家族を救うためじいさんはこれまでひた隠しにしてきた佑河家代々に伝わる「止界術」を使い世界を止めるが……。
「止界術」という独創的なアイデアが秀逸な漫画。
森羅万象が止まった世界「止界」の中では術をかけたじいさん、樹里、父・貴文だけが自由に動き回れるはずが、誘拐犯のアジトで同じように動く人間に遭遇します。
「管理人」と呼ばれる異形の存在や謎の宗教団体・真純実愛会など1巻から伏線的なシーンが満載で高まる……。
主人公がエプロンにつっかけサンダルでバトルするとかシュールすぎると読み始めは笑っていましたが、読み進めると本当に日常の一コマが止まってしまったのだと感じ、永遠の6時59分が急に重たくなりました。
SFテイストが強めの作品だとどうしても世界のスケールが大きくなりがちなのですが、「刻刻」の素晴らしいところは本当に日常の一コマの範囲内で収めるという手腕。逆に難しいと思います。
「止界」の中で動いている当人たちも止界術の設定があやふやなまま行動しているので、こちらもうろちょろついてしまいますが、それがリアルで良い。
樹里たちは日常の世界に戻れるのか?一点集中型の設定を貫いた漫画!
不能犯
「不能犯」は「思い込み」を巧みに操り、依頼されたターゲットを殺害していくサイコサスペンス漫画。
犯行を立証できない「不能犯」の殺し屋・宇相吹が人間の脆さを暴く!
ヘビーで救いようのない漫画が読みたいなら「不能犯」をどうぞ♪
【漫画】不能犯|「思い込み」を操るサイコサスペンス!あらすじと感想
誘爆発作
こちらも帯につられてしまった。心臓を共有するという斬新なアイデアの漫画。
常であれば「誘爆発作」なんてほぴっとんのタイトル買いの漫画でしょう。
しかし、劇画チックな1巻の表紙の男性を好きになれるかどうかで二の足を踏んでいまして、結局「この漫画、心臓に悪い」という沙村広明先生の帯の言葉を信じて持って帰りました。
ある日、なんの面識もない2人がテレパシーで会話が出来るようになる。平凡な女性会社員・ 久我真咲の頭の中に響く夜ごとの幻聴。それが実在する老人・武藤勘二の思考であると知ると、真咲は心臓病を患った武藤の心臓をふたりで共有することになるが……。
普通の20代女性・真咲と余生を妻と過ごす老人・武藤の2人が夜の1時間ほど思考が繋がるという奇抜な設定。
また、真咲は若い女性が殺される場面を幻覚で見るようになり、どうやら20年前に失踪した武藤の娘と関わりがあるようだが?
とにかく心臓病のじいさんがドキドキするたび真咲の心臓まで誘爆してしまうところが面白い!
ハラハラがエンドレスに続くので、ほぴっとんの心臓も誘爆しそうだ……。
絵柄は表紙と中身が全然違う。劇画ではなかった。とても画力が高くシュとしていて好みの絵だった。ほぴっとんのように表紙で敬遠している方はご心配なく。
一進一退のシーソーゲームが楽しめる漫画!
Death Note
原作・大場つぐみ先生、作画・小畑健先生による「週刊少年ジャンプ」が誇るサスペンス漫画。全12巻。
名前を書かれた人間は死ぬという死神のリュークが落としたノート「DEATH NOTE」を手に入れた夜神月(やがみライト)。犯罪者の名前をノートに書いて殺害し、犯罪者の居ない新世界を創ろうとするが……。
もはや神と化した「キラ(KIRA)=ライト」と世界一の名探偵「L」との心理戦の駆け引きが面白い!
物語の鍵である「DEATH NOTE」の独自ルールが結構細かくて、いつも忘れてしまうのが難点。
7巻あたりからはもう最終巻の出待ち状態でしたよ……。ルールを失念すると置いてけぼりを喰らいますから、一気読み必須!
小畑健先生のスタイリッシュな絵で頭脳戦バトルを満喫できる漫画!
罪と罰
対象年齢が上がりますが、「Death Note」が好きなら「罪と罰」も意外とフィットするかも?
世界文学史上に残る名作・ドストエフスキーの「罪と罰」を原案とした落合尚之先生の漫画。全10巻。
引きこもりの大学生・裁弥勒は女子高生・リサとの出会いによって、崇高な目的であれば流血も贖えると、 ある恐ろしい「計画」に手を染めることになるが……。
ドストエフスキーに挑んだ時点で読みやすさなどに期待する方が間違っている……。重苦しくて当然な漫画でしょう。
混乱極める19世紀のロシアではなく、現代の日本を舞台として引きこもりや援助交際といった社会の暗部にスポットを当てて、病んだ倫理観で殺人を企てた主人公の弥勒が自身の罪と向き合う話。
正直、ほぴっとんも初読の際はこの自尊心が肥大しすぎた引きこもりを受け入れ難く4巻で頓挫しまして、その後偶然棚の奥から転がり出てきたので久しぶりに読んだら続きが読みたくなってしまった漫画。
「害虫駆除」は罪になるのか?との問いかけに落合尚之先生がどういう答えをだすのか興味深い思いに駆られてしまった。
なぜ人を殺してはいけないのか?きれいごとや建前を取り払うと答えが出せますか?
みんなが人を殺してはダメと思っているなら、世界から殺人がなくはるはずですが……。
共感のできない主人公であるため読み進めるのはしんどい話だったのですが、弥勒が検事の五位とのやり取りで次第に変化していく姿は一読の価値あり!
普遍的なテーマに哲学的な観念が織り込まれていて引き込まれる漫画。
まとめ
どの漫画もハラハラする展開ばかり……。傑作漫画が集まりましたな……。
しかし、意外とほぴっとんは帯を見て漫画の購入を決めているのですね。
「知らんかったわ!」
帯帯詐欺に引っかかることもありますが、帯のおかげで出会える漫画もあります。
どっぷりとサスペンスに浸りたいときにおすすめの漫画!