「有害都市」は筒井哲也先生による有害図書をテーマとした漫画。全2巻。
筒井哲也先生の傑作漫画「マンホール」が長崎県の青少年保護育成条例に基づく有害図書指定を受けたことに端を発して描かれた、恐るべき近未来が描かれた漫画だ。
よくぞ描いてくれました。感謝感激!
ほぴっとん、日頃の鬱憤を晴らすべく熱く語ります……。
あらすじ
2020年、東京の街ではオリンピックを目前に控え、“浄化作戦“と称した異常な排斥運動が行われ、猥褻なもの、いかがわしいものを排除するべきだという風潮に傾き始めていた。そんな状況下で、漫画家・日比野幹雄はホラー作品「DARK•WALKER」を発表しようとしていた。表現規制の壁に阻まれながらも連載を獲得するが、作品の行方は──!?
“表現の自由“を巡る業界震撼の衝撃作!!筒井哲也 集英社 有害都市 より引用
有害都市の魅力
来るべき悪夢の未来に備えて読んでおくべき漫画だ。
DARK•WALKERとは
「有害都市」の作中で描かれる「DARK•WALKER」は一件の交通事故から始まる。
バイク事故によって死亡したと見られる男性は肉食獣に襲われたような激しい損傷が残されていたが、その噛み跡は人間によるものだった……。
突如凶暴化して人の屍肉を喰らう恐ろしい伝染病=食屍病が密かに拡散する恐怖が描かれた漫画だ。
まず手始めに「DARK•WALKER」のストーリーのキーポイントである食屍病が問題となる。
人が人を喰うのはOUTで、ゾンビが人を喰うのはOKという、なんともなんとも倫理観のボーダーが曖昧な定義。
下手を打つと雑誌の回収という憂き目にあうため、編集者もそのあたりのさじ加減が難しい。
「世の中の恐ろしい変化に気が付いた時にはもう、世界はすでに変わり果てていた。」
「DARK•WALKER」の作中のセリフと漫画家・日比野幹雄の生きる現実世界をリンクさせたストーリ展開が巧みで引き込まれる漫画だ!
有害作家認定
そもそも、これらの一連の問題は来たる2020年・東京オリンピックのための浄化作戦なワケだが、有識者たちから成る会議によって数多く出版されている漫画の中から汚らわしいものを不健全図書と有害図書に認定するという……。
過激な性表現や暴力、残虐表現や、反社会的で青少年の健全な育成を阻害すると判断される作品に有害図書指定がされる。
今回の会議で槍玉に上がるのが「ぶらこん!」という漫画なのだが、兄と妹の近親相姦よりも17歳の妹が13歳に見えるので完全に児童ポルノだと、そっちの論議に怒り心頭。
なんですか?タナー法って?
(タナー法=乳房などの発達具合で年齢を判定する方法)
吹き出しましたよ。ほぴっとんなんて肌のハリは失われましたが、13歳の時から体型が変わっていないのですが……。
幼児体形に対する差別だ!許しがたい……。
「クールジャパンにエログロは必要ありません」だと!?
エログロ=無能漫画家=退場
よって、最悪の措置となる有害作家認定された漫画家はキャリアを絶たれ、強制退場させられるのだ……。
対岸の火事ではない!
現実社会にも「有害都市」の恐怖が迫ってきている!
東京都でも青少年育成条例の改正によってエログロや暴力的表現のある漫画は規制されている。
マニア向けのエロ本やロリコン漫画が世界から消えても、大抵の人は困らない。
だから、「規制してもOKですよ」という流れなのだが、他人事だから落とし穴に気が付いていない。
エロ本に言論弾圧だと叫ぶ人も少数でしょうしね……。
ほぴっとんは漫画にR指定をつけても構わないと思っている。そりゃ、乙女ですから買いにくさはあるが、漫画家さんたちが制限なく描きたいものを描けた方が絶対に面白い漫画が世にでるからだ。
しかし、この有害図書問題の難しいポイントは、どこにボーダーを設けるか?ということに尽きる。
「有害都市」の作中では、近親相姦やレイプなど不健全とされる物はもちろんOUTだが、タバコや血が出ている死体もNG。
エッ?そしたら、ミステリーなんて完全に有害図書だろう。
人が人に殺される事件から物語がスタートするもんね……。
サスペンス、ホラー、バトルも血が出るよ。危険危険。真似をする子がいるから。
友達の彼氏を好きになるのもダメだと思うよ。恋愛がらみの怨恨で人は人を殺します。漫画の模倣でそういう事件が起こるかもしれん。
これは、古事記にぼかしが入る日も近いな……。
世界は残酷だ
子どもに教育上好ましくないものを見せないという選択には、ほぴっとんも賛成だ。
しかし、我々人類はエロによって生まれ、残酷な死によって生かされている。
この不変的な真理を美しいもののみで覆い隠してしまうと、子どもたちは一体いつ現実と向き合えばよいのか?
社会に出れば、格差と競争の原理で生きていかねばならないのに……。
世の中は残酷な出来事で溢れている。
子どもが20歳になったら、大人が教えてあげるのですか?
誰もそんなことは教えてくれませんよ。
漫画や本、テレビやネットから知識を得て成長するのに大人の目線で有害と決めつけシャットアウトしたら、余計に悪の道に興味を持つと思うよ。
だって、自分が子どもの時のことを考えたら親に内緒で危険なことをしまくっていましたから……。
それとエログロと何の関係がある?と思われるかもしれませんが、世界はエロとグロで回っているってことですよ。
子どもも無知なままでは生きられませんから、規制をかけるにしても選択の自由は残しておいてほしいという希望を熱く語りました。
まとめ
「有害都市」は傑作漫画ですよ。本当に素晴らしいテーマを選んでくれました。
「AKIRA」や「COPPELION」のように予知漫画のジャンルに入りそうな漫画だ。
こんな恐ろしい未来にならないように願うが、漫画の真似をしていじめが過激になっている現状もありますし、非常に難しい問題。
表現の自由は守られないといけない。
そうでないと社会情勢の変化によって権力者に都合よく書き換えられた歴史を繰り返してしまう。
「有害都市」は読んでいて胸糞が悪くなるような輩たちの言い分が通る不条理な世界だが、非常に深く考えさせられる漫画だ。
1人でも多くの人に読んでほしいと心の底から願う漫画です。
ほぴっとんは「有害都市」を読んだら必ず「ユートピアズ」も抱き合わせで読みます。
恐るべきディストピアな世界が描かれた傑作漫画だ!