「海の闇、月の影」は「天は赤い河のほとり」で知られる篠原千絵先生によるサスペンスホラー漫画。コミックス全18巻、文庫版全11巻。
年齢的に「りぼん」から「週刊少女コミック」に鞍替えした時期に連載していたのが「海の闇、月の影」です。この記事を書くために久しぶりに読み返しましたが、やっぱり面白い。ほぴっとんは「闇のパープル・アイ」よりも「海闇」推しですね。
あらすじ
仲の良い双子の姉妹、小早川流風(るか)と流水(るみ)は、陸上部の先輩で人気者の当麻克之に恋をしていたが、克之が好きになったのは流風だった。
返事を迷う流風に流水は「月曜になったら好きって言いなよ」と流風の背中を押す。
日曜日に女子陸上部の仲間たちとハイキングに出かけた2人は、突然の雨にあい古墳の横穴に避難したが、岩が崩れた途端奇妙な匂いがしてみんな気分が悪くなってしまった。
そして、流風と流水だけが生き残ってしまうが……。
おすすめのポイント
ムー民(学研ムーの愛読者)であるほぴっとんは「ツタンカーメン呪い」ではないか?と双子が感染してしまう古代の未知ウイルスという設定に興奮したものです。
古代の未知ウイルス
そのハイキングの出来事がきっかけで、古代の未知ウイルスに感染した2人は宙に浮く能力と物体を通り抜けるという特殊な能力を身につけます。
さらに、流水は自分の体液から他人にウイルスを感染させ意のままに操る能力、流風は逆にそのウイルスへの抗体を持つようになる。
克之が何もかも自分と同じはずの流風を選んだために、流水は憎悪を募らせ次々と人を感染させ流風を殺そうとする……。
海の闇、月の影の見所
ホラーな展開が醍醐味の「海の闇、月の影」の読みどころは、双子の姉妹の愛憎劇ですね。
克之を手に入れるためになりふり構わない流水と、純で悲劇のヒロインチックな流風を克之が万全にサポートするという、流水に同情心を抱いた女子は多かったはずだ……。
また、克行の父から相談を受け来日したジーン・アルバート・ジョンソンを応援した女子もいただろう。
なにせ金髪碧目に長髪でIQ270の頭脳を持つ男前だ。
しかし、ジーンは曲者で、意図的にウイルスに感染して双子以上の能力をちゃっかり得ていやがる……。
流水のウイルスを使って世界征服を目論んでいたりもするし、物語のキーである薬を作ります。
流風の血を混ぜると流水に感染した人間を元通りに戻せ、流水の血を混ぜれば流風の抗体が入った人物でも感染させることが出来る薬という、これまた、ちょっとした文明の衝突かというぐらい憎しみのスケールが大きくなる薬をつくちゃったな……。
この薬の処方箋を巡って、世界中を巻き込んだウイルスバトルが始まるわけです。
海の闇、月の影の感想
余談ですが、ジーンの生まれ故郷・カレリアのエピソードがよかった。
カレリアは一卵性双生児の出生率が80%を超える地域で、写真に映った人間のほとんどが双子っていうシーン。
物語が進むと、善悪、強弱といった対比で描かれていた双子のイメージが反転するような場面もあり、双子にしか使えない特技である入れ替わりなどのシーンも非常にハラハラさせられます。
ちなみに、ほぴっとんの鮮血への目覚めを促した作品でもあります。へへッ!
篠原先生の飛び散る血痕の耽美さに惚れ込んでしまって、授業中ノートの角に滴る血液をパラパラ漫画にしていましたから……。
あと、流水がめっちゃ口角引きつらせて笑うのですよ。子ども心にホラーだと感じていたのですが、大人になって見てもホラーでしたね。
切なすぎるクライマックスに涙した漫画!
続いて、篠原千絵先生の作品は全て読んでいるほぴっとんが一押しをおすすめします。
そして5回の鈴が鳴る
デビュー作を含む初期の短編集ですが、限られたページ数の中に恐怖が圧縮されていて、何度読んでも手にヒヤ汗をかく作品。
個性的な絵柄が恐ろしさを増すんですよ。「ガラスの仮面」は衝撃を黒目なしの瞳で描きますけど、篠原先生は生気の抜けたような白目で応戦します。
表題作「そして5回の鈴が鳴る」は主人公の愛子が綺麗な鈴を拾ったその日から、知らないうちに殺人を犯してしまうという事件を描いた作品。
まとめ
他にも、篠原先生の短編集はどれも本当に面白いです。「逃亡急行」や「海に墜ちるツバメ」も大好きですね!
篠原千絵先生は連載中に劇的に絵柄が変化するタイプの作家さんではないので、「夢の雫、黄金の鳥籠」と比べて見てもあまり違和感がありませんが、怖い話や絵が苦手な方は避けた方が無難です。
また機会があれば篠原先生の作品をご紹介したいと思います。