アラベスク+牧神の午後+黒鳥|山岸凉子のバレエ漫画・その②

誰もが知るバレエ漫画の金字塔「アラベスク」!時代を超えて愛されるのは面白いから!

何度読み返したか?そして、何度読んでも感動させられる。「アラベスク」は名作中の名作だ。 完全版として復刻したので手に入りやすくなりました!

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アラベスク

あらすじ

「アラベスク」の主人公ノンナ・ペトロワはキエフ・シエフチェンコバレエ学校の6年生。

ノンナはバレリーナにしては背が高く、才能のある姉と比較される事にコンプレックスを抱いている。

そんな時、ノンナはソビエトの金の星と呼ばれる若手天才ダンサーミロノフ先生に才能を見いだされ、レニングラード・バレエ学校に編入する事になった。

バレエ漫画の王道

自分に自信が持てず、メソメソしてばかりいるノンナにとってミロノフ先生のスパルタレッスンは地獄そのもの。

荒削りで優美さに欠けるノンナがミロノフ先生に磨かれて成長していく姿は、これぞバレエ漫画の王道と感じさせてくれる。

そして、ノンナはキーロフ・バレエ団の新創作舞踊「アラベスク」の主役「モルジアナ」の主役に抜擢され一躍有名になるが、映画版「モルジアナ」の主演をめぐり、ボリショイの天才少女ライサ・ソフィア(愛称ラーラ)と競いあう事になる。

このラーラがね、モロ少女漫画のライバルなんです。

完璧な美貌に高いプライド。高笑いがやけに板についているのもそのはず、ラーラはプリマになるために生まれてきた、すべてのバレリーナがのどから手がでるほど欲しい黄金の足を天から与えられた女の子なんです。

「9分の汗だけじゃ天才の10分にはたりないのよ。のこりの1分があなたにある?」

1度言ってみたいよ、こんなセリフ……。

心を折るラーラの重たい一撃にワナワナと震えるノンナ。プレパラート級に脆いハートの持ち主ノンナが自信たっぷりのラーラと激しい戦いを繰り広げるのだから、面白くないはずがない‼︎

アラベスク 第2部

第2部に入ると、ノンナには自身につきまとうデビュー作のイメージを払拭するという新たな試練が立ちはだかります。ライバルも強烈な個性の女ばかり……。

バレエは芸術ですから、技術だけでは表現できない難しさがあります。その表現をどれだけ自分のものにするか、そしてそれをどう伝えるのかという内面の確立が必要となってきます。

ノンナが何かをつかもうともがく中、厳しく見守るミロノフ先生がまた良いんですね。

コンプレックスに苦悩し続けたノンナが弱さを受け入れ、踊ることに自分のすべてを捧げることで体現し得た真のロマンチックバレエ。

クライマックスの「ラ・シルフィード」の踊りは圧巻の一言‼︎

ノンナとミロノフ先生の愛の結末も見届けてほしい。バレエ漫画の傑作‼︎

牧神の午後

天才と称された伝説のバレエダンサー、ニジンスキーの半生を、ミハイル・フォーキンの視点で描がいた作品。

「牧神の午後」とは 、ニジンスキーが振り付けをしたバレエの演目の一つなのですが、かなり衝撃的な表現方法を用いています。

「牧神の午後」ではニジンスキーは驚異的な跳躍力を持った憑依型のダンサーとして神がかりのようなバレエを踊りますが、それと引き換えにするように現実の世界ではコミニュケーション不全で、適応能力に欠ける人物として描かれています。

翼をもった者には腕がない。

腕がある者には翼がない。

それがこの地上の鉄則なのだ。

山岸凉子 メディアファクトリー 牧神の午後より引用

まさに作中で書かれていることが心理ですね。

また、対比がすざまじいですね。

華々しいデビューから、ままごとのような結婚をして、同性愛者のパトロンから恨まれて、転落する人生。

そして発狂するとか、ドラマのある生涯です。

山岸凉子先生にニジンスキーを描いてほしい人は多かったでしょうね。

ファンをしかっり満足させるところがやはりわかってらしゃるなと感心します。

『注意‼︎‼︎』

「黒鳥」が同時収録されているので、カブったと残念に思うかもしれませんが、

幾ら重なっても手元に置いて置くべき漫画ですよ。

黒鳥

黒鳥 あらすじ

マリアは18歳の時に、天才振付師、ミスターBことジョージ・バランシンと出会い、バレリーナとしての名声と彼の三人目の妻の座を手に入れるが、それを脅かす新たな「才能」と「美」を持つタニィの存在に気が付く。

「黒鳥」は結構キツイストーリーだ。

振付師である夫の望み通りに踊れない妻。そしてその背後にミスターBにとって自分の作品の本領を発揮してくれる若いタニィがかつての自分のように控えているのだからたまらない……。

激しいジェラシーが知らず知らずのうちに呪いに変わったと知った時、マリアは自分自身に恐怖を抱く。

「アラベスク」のノンナは黒鳥の踊りを得意としていたが、マリアは白鳥ばかりを踊らされています。

ノンナの本質が白鳥に近いものであったように、マリアもまた嫉妬心や自身への憎悪を舞に昇華させることで類稀な黒鳥を踊るのです。

「黒鳥」のラストのページでマリアが炎のように激しく踊ったシーンは、バレエ漫画史上最高の一枚とほぴっとんが勝手に認定しております。

また、「貴船の道」「緘黙の底」「鬼子母神」など収録されている他3編もテーマはバレエではありませんが、非常に面白くオススメです。

どれもテイストはダークですよ。ハズレなしの傑作短編集。

黒鳥 収録作品

・貴船の道

略奪愛からの結婚で、いきなり2人の子供の継母になった真紀子。慣れない生活に懐かない子供たち。夫への疑念から嫉妬に狂った情念を前妻とリンクさせていく。

・緘黙の底

小学校の養護教諭である吉岡彩子のもとへ落ち着きのない反抗的な転校生、香取恵が体調不良で訪れる。挙動の不審な恵に彩子は性的な虐待を受けているのではないかと疑うが……。

・鬼子母神

二卵性の双子として生まれた兄と妹。しかし、母親は妹を軽視し兄を偏愛する。兄には菩薩の顔を、妹には鬼神の顔をのぞかせる母親と次第に破綻していく家族の姿を鬼子母神の説話になぞらえて描いた作品。

まとめ

少女漫画で育ったほぴっとんはこの古臭い絵柄を味と捉えるんですけどね。テレプシコーラを読んでアラベスクに興味を持ったら、この絵は苦手でしょうね。特に男性と若い子なんかは……。(今の子はソビエトを知っているのか?)

面白いのにもったいないな。

バレエ漫画の金字塔ですから、読まずにバレエ漫画は語れませんよ‼︎