「エマ」は「乙嫁語り」で知られる森薫先生によるヴィクトリア朝時代のロンドンを舞台としたメイドと貴族の身分違いの恋を描いたラブロマンス漫画。森薫先生のメイド愛が炸裂したほんわかストーリー。
エマ あらすじ
19世紀末、産業革命による革新的な変化がもたらされたロンドンは未だ古い慣習と階級社会が根強く残る時代でもあった。
そんな中、久しぶりに隠居生活を送っているかつての家庭教師(ガヴァネス)、ケリー・ストウナーを訪ねたウィリアム・ジョーンズは、そこで働くメイドのエマに一目惚れをするが……。
ストーリー展開
急用のためケリーに追い出されてしまったが、もっとエマと話をしたかったウィリアムは手袋を忘れるという古典的な手法でエマを連れ出す。
その後、ウィリアムのプレゼント攻撃など紳士的なアプローチに心惹かれるエマ。(もちろん、物ではなく気遣いに好意を抱くのですよ)
お互いに想い合う仲になるのだが、身分が違いすぎるため様々な障害があります。
困難を乗り越え2人は結ばれるのか?
ちょっとポカンとなるポイント
エマは無口で美人でメガネで照れ屋なメイドとの設定ですが、正直美人だと全く思わないのはほぴっとんだけでしょうか?
孤児となり貧しさのために売られロンドンで花売り娘をしていたところをケリーに引き取られたエマは確かに苦労人ですが、控えめな性格だからかあまりそう感じさせない。
ウィリアムはエマが美人だったから恋に落ち結婚を考えるワケですが、ほぴっとんの目線ですと普通の顔にパッとしない性格の子がモテモテの人生を歩んでいる点に結局最後まで感情移入できませんでした。
また、ウィリアムも真性のお貴族様ではありませんよね。
裕福な貿易商・ジョーンズ家の長男であるウィリアムは上流階級ではありますが、爵位を持っていません。イギリスにおけるこの爵位というのは鬼の掟ですから爵位のあるなしで隔たれる溝はマリアナ海溝レベルですよ。
ジョーンズ家はジェントリと呼ばれる貴族階級です。ジェントリは貴族階級の中で一番下っ端の男爵のさらに下級に位置し、正しくは貴族に含まないが貴族扱いはしますよという微妙な立場の存在だ。
まあ、成金だけど金持ってるから仲間のふりを一応しておこうぜ!ぐらいのものでしょうか?
ウィリアムが真なる貴族であったなら、エマを妾にして終わるだけの話。
「エマ」はウィリアムがジェントリであったからこそ成り立つ夢物語でしょう。
これらの点が少々引っかかるのですが、それをスルーすると「エマ」はとても面白い漫画だ!
エマの魅力
セレブとメイドの恋ですからね。身分違いであることは間違いありません。
「タイタニック」しかり障害があった方が恋はも燃えると言います。
もちろん、ウィリアムの父からは断固として反対されますし、誰からも祝福されない恋であるため様々な困難が2人に襲いかかるのだ。
エマは一度は身を引くも、再びウィリアムと運命的な再開をして気持ちを抑えきれないあたり、ホワホワさせられます。
また、ヴィクトリア朝時代のイギリスの日常が見事に描かれており、さすがは森薫先生と感服する次第です。
現代社会でも恋文が手紙からLINEに変わったのだってつい最近。19世紀なんて今とは比べられないぐらい激動の時代ですよ。車じゃなく馬車だし、時代背景や生活の様子がしっかり描かれているのも「エマ」の魅力!
この辺りはしかっり「乙嫁語り」にも引き継がれていて納得の安定感。
7巻でエマとウィリアムの話は完結します。後の3巻は番外編です。
同じく近代のイギリスを舞台としたメイドもの「シャーリー」も出版されています。
シャーリー
カフェ「モナ・リザ」を営むベネット・リーの元にメイドの応募に訪れた少女シャーリー・メディスン。募集要項に年齢制限をし忘れたベネットはシャーリー がまだ13歳と若すぎることから雇うのをためらうが、他に行く当てのなさそうな彼女の様子を察する。
結局、ベネットはティプシーケーキが作れるという誘惑に負けてシャーリーを住み込みで雇うことに決めるが……。
絶妙な距離感で描かれる2人の日常にほっこりされられる漫画。
まとめ
森薫先生の作品にはあとがき漫画がついていて、実はそれが一番面白く笑えたりする……。
さっぱりした絵柄なので読む人を選ばない作風だと思います。身分違いに苦しむ恋愛モノにしては険悪さがあまりなく、読みやすい作品です。
森薫先生のメイド萌えを堪能する漫画だ。