「ハカイジュウ」は本田真吾先生による都市型モンスターパニック漫画。全21巻。
絶望のドミノ倒しとはこのこと……。
「ハカイジュウ」は次々と生まれ出でる圧倒的なクリーチャーの造形を楽しむ漫画だ。
そして、そのクリーチャーたちの破壊行動は「ストーリーは必要ない」と断言できるほど完成された凄まじい描写。
2017年7月、ついに完結を迎え最終巻が発売されました。
あらすじ
東京・立川市内の学校に通う陽(あきら)はバスケに打ち込むごく普通の高校生。
ある日、幼なじみの瑛士とともにバスケの練習のため体育倉庫へボールを取りに行った瞬間、突然大地震に見舞われる。
意識が戻った陽が停電した真っ暗な体育館で見たモノとは……?
ハカイジュウの魅力
完膚無きまでの破壊。未知なる生物。そして、加速していく恐怖……。
ストーリー展開
地震によって崩壊した学校の中で、積み重なる同級生たちの死体の山。
そして、その中には友人・瑛士の姿も……。
未知なる異形生物に襲われ逃げ惑う陽は惨殺死体の中に潜んでいて難を逃れた生徒会長の白崎奈央とともに必死にその場を離れようとするも、超巨大生物の強襲によって学校は完全崩壊。
そんな中、転校して東京を離れていた幼なじみの未来(みく)が修学旅行で立川に来ていることを知った陽。
白崎たちと立川駅に向かうが、その道中底が見えないぐらい深い穴を発見する。
完全なる捕食者である異形生物の襲撃をかわしなんとか駅にたどり着くも、学校を破壊した超巨大生物が目前に迫っていた……。
次々に出現する異形生物によって崩壊する都市。溢れかえる惨死体。
逃げ場はどこにもない……。
陽の、そして人類の未来はどうなってしまうのか……?
パニック!パニック!
止まぬ、異形生物の襲来!
これぞパニック漫画の真骨頂だ。
最高のスタートダッシュをきった「ハカイジュウ」。
序盤のストーリー展開が王道的だっただけに中盤から戦隊モノの様相を呈してきた際に「エッ?」という驚きはありましたが、 ハカイジュウが猛烈なデカさを誇るため、致し方ないでしょう……。
人類の従来の重火器など逆に通用する方が謎な話。
しかし、妙な舵をきっても「そんなことはどうでもいいですよ」と感じさせるほどテーマを絞った漫画だということです。
尋常ではない異形生物に立ち向かう人類の叡智を集結させたバトル!
「ハカイジュウ」は破壊を読む漫画だ!
ハカイジュウの造形
人間の遠近感が狂って、足が短かったり胴が長かったり(同じか……)するのに、ハカイジュウの造形に関しては一分の狂いもないとか逆にすごい……。
デザイン自体も素晴らしい上に、細部に至るまでの描き込み量がハンパない。
タイプは違いますが、大友克洋先生の「AKIRA」を感じさせる緻密さ。
「ハカイジュウ」のクリーチャーの造形に目を奪われた方は、「ベルセルク」「CLAYMORE」も必読!
玉井雪雄先生の「ケダマメ」も異形造形がカッコイイ!
白崎奈央がすごいよ!
「ハカイジュウ」はツッコミ所の多いヒロイン・白崎奈央を応援する漫画でもある……。
主人公の陽を押しのけて、クールな生徒会長・白崎奈央がほぴっとんのハートに居座っています。
白崎はカッコイイですよ。
登場時は異形に怯える普通の女の子だったのに、2巻の段階でもうすでに覚醒していて腹をくくっていますからね。
断固たる決意はあるが口だけの未来と違って、白崎は行動力と統率力の高さを見せつけてくれます。
また、白崎奈央の体育教師・武重に対する扱いの格差がひどい……。
白崎を勝手に妃にするという妄想が炸裂している武重(王)は確かにキモい男だが、何度も助けられているのにね。
第1部のクライマックスで、超巨大生物を封印する際に武重が手足をもがれてるのに「先生!まだいけます!!」と奮起させるシーンには背筋が凍った……。
好意を抱いている陽以外の男なんてかませだよ。という女のシビアな一面が胸に刺さる名場面だ。
第2部(14巻〜)から主人公が鷹代陽と白崎奈央の娘である鷹代魅央にバトンタッチしますが、彼女は髪型が変わっただけで白崎奈央です……。
まとめ
本田真吾先生がお父様から「こういう漫画は描いてほしくなかった……。」と言わしめるだけのことはある 最恐の漫画「ハカイジュウ」。
他人事とは思えず涙してしまった……。
ほぴっとんの父もかわいい娘がグロリズム宣言するとは思っていなかったでしょうね。
「ハカイジュウ」の異形たちによる殲滅行動にはある種の感動を覚えるほどですよ。
「人がゴミのようだ!」 (「天空の城ラピュタ」より、ムスカ様のお言葉)
しかし、死屍累々の変わり果てた世界の中にあっても「ハカイジュウ」はいつも小さな希望を残してくれます。
そして、「ハカイジュウ」は結末の締め方も独創的で良かった!
そもそも世界をこんなハチャメチャなことにしちゃった元凶であるヤツの狂ったロリコン愛によって世界が救われるとか、王道的な感覚とは大いなるズレが生じる漫画だが、圧巻のカタルシス(笑い)を産んだクライマックス!
すげえ!本田先生はすごいよ!
ぜひその目で堪能することをおすすめする……。