「聲の形」(こえのかたち)は、大今良時先生による耳の聞こえない少女をめぐる壮絶なドラマ漫画。全7巻。
「このマンガがすごい!2015」オトコ部門1位、「マンガ大賞2015」で第3位を獲得するなど、非常に評価が高い。
聴覚障害やいじめを題材としてコミュニケーションの難しさを描いているだけに、ヘビーで深く考えされられる漫画だ。
聲の形 あらすじ
退屈が嫌いで度胸試しやら馬鹿なことばかりやっている少年・石田将也。そんな彼の通う小学校に耳が聞こえない少女・西宮硝子が転校してくるのだが……。
聲の形の魅力
ストーリー展開
物語は高校生になった石田将也が自分の愚行で転校させてしまった聴覚障害者の西宮硝子と再会を果たすシーンから始まる。
そこから2人が出会った6年前、小学6年生の時間に遡る展開。
橋から川に飛び込んだり、危険な度胸試し大会で退屈を紛らわせていた石田。
友達の島田は塾へ、広瀬からも危険なことはやめようと言われ、ますます退屈をもてあますように……。
そんな中、聴覚障害を持った西宮硝子が石田の学校に転校してくる。
石田少年がアホすぎて泣けてくる話なのですが、まるで新しいおもちゃを手に入れたように彼女にちょっかいをだすのです。
モラルがないと担任に叱られるも、西宮のために筆談で教えてあげる手間がかかる分授業は遅れるし、当たり前の日常が破壊されてしまった。
石田は西宮のことを異星人かつ害悪な邪魔者だと認識し徹底的にいじめ始めるのだが、エスカレートしすぎてクラスから孤立。
因果応報でガキ大将からいじめられっ子になってしまった石田。
何をされてもごめんなさいとヘラヘラ笑っている西宮にイラついた石田は彼女をボコボコにするという暴挙。→西宮転校。
大嫌いだったはず……。でももう一度、会いたい。
高校3年生になった石田は西宮を探し出し、意を決して友達になろうとするが……。
何?このヘビーな展開
ここまで嫌なヤツしか出てこない漫画もめずらしいや!という感想。
石田少年も最悪だが担任もひどいし、クラスメートもクソばかり……。
しかし、「聲の形」は仕方がないではすまされないリアルさが響く漫画だ。
聴覚障害があると耳が聞こえないだけではなく「話す」ことも難しい場合がある。
西宮硝子の場合は補聴器をつけても会話はほとんど聞き取れず、言葉も他人にはうまく伝わらない。
おそらく石田少年は好奇心から西宮の声をからかったり興味を持ったのだろうが、無邪気さが残酷な行動に変わってしまった……。
担任がまた事なかれ主義でねぇ。嫌な気分にさせられる。
石田少年は初めて聴覚障害者と出会って関わり方がわかっていなかった。
それなのに一方的に西宮の世話を植野直花に任せて放棄した担任。
担任からしてみたら扱い方がわからないので特別支援学校に行ってほしいと思っているだろうし、こういったことは親が教育すべきことなのだろう。
正直、担任がこれでは耳が聞こえない云々ではなく、石田や植野が西宮を嫌っても仕方がない。
結果、みんなにとって最悪な小学時代となってしまったワケだが、なんとか過去を清算したい石田は、どうあがいても幸せだった西宮の時間は戻ってこないとわかっていても、過去と向き合うことを決意をするのだ。
耳が聞こえないだけと言ってしまえば軽く聞こえるが、西宮を中心に石田家と西宮家、現在と過去の友達たちの双方の言い分が絡み合ってヘビーな展開が繰り広げられる。
誰も悪くないのにみんなが悪い
「聲の形」はライトな気分で読み進められる漫画ではないことだけは確かだ……。
まとめ
「わしらの家にあーゆーのはいらん」
ドライなヤツだと思っていた西宮の母ちゃんが、娘に障害があるとわかって離婚されてしまったシーンが一番刺さった。
しかも、お腹には妹の結絃がいるというリアルさ……。
最終的には、石田の母ちゃんと腹を割って酒をあおっているし、救われた気がした。
さらに、終盤では西宮硝子が何を思って笑顔で生きていたのかが描かれていて、グイグイ来ますよ。
「聲の形」は一種の学習漫画ですね。
友達って何だろう?と深く考えさせられるし、コミュニケーションの大切さやしくじりから前に進む勇気をもらえます。
あの時「聲の形」を読んでいたら、何かが変わったかもしれないと思う方は大勢いるはず……。
全小学校の図書館に置いておくべき素晴らしい漫画だ♪