星野之宣先生による「宗像教授シリーズ」は「宗像教授伝奇考」から始まり、「宗像教授異考録」に終わります。
宗像教授伝奇考
潮出版社版から全6巻+特別版で出版されています。
特別版には星野之宣先生×諸星大二郎先生のスペシャル対談が収録されていて、おまけに宗像教授の足跡を追うMAPとfileごとの作品紹介も掲載されています。
ファンにとっては狂喜乱舞の一品!
ほぴっとんが持っているのはこの潮出版社のA5版です。場所を取るので文庫版を揃えたい……。
潮漫画文庫版 全7巻と小学館特製版 全8巻でも出版されています。
宗像教授異考録
「宗像教授異考録」から出版の場を小学館のビッグコミックに移し全15巻で完結しています。
ほぴっとんが「宗像教授異考録」で一番好きな話、第9集・第1話「鯨神」をご紹介します。
鯨神 あらすじ
日本では古来より大晦日から正月にかけて仮面をつけた「来訪神」あるいは「客人」が家々を訪れる。(秋田県のなまはげや石川県のあまめはぎなど)
同じような風習が中国やヨーロッパにも存在し、稲作文化とともに伝播したと考えられるが、日本には特異な点があった。
それは、他の地域が内陸の農村で穀霊を迎えるのに対し、日本だけが東北から北陸にかけての海沿いに伝統が残されている。
宗像教授はこれらを穀霊の姿を借りた海からの「来訪神」であったのではないかと推測するが……。
なぜ「鯨神」に惹かれるか?
教え子の美波碧(みなみ みどり)が提出したリポートに興味を持った宗像教授は碧の故郷の石川県・勇魚神社を訪れます。
勇魚とは古い言葉で鯨のことをいい、海老洲浜町(えびすはま)は鯨のヒゲを用いた衣装を身につける「海身剥ぎ(あまみはぎ)」の伝統が残る地域です。
神社の奥の岩壁が地震で崩れ落ち、中からバラバラに解体された鯨の骨がでてきますが、これらは「寄り鯨」といって陸地に近づきすぎたため座礁した鯨の残骸で、古代から神の恵や海の化身として食し、感謝の意を記し神として祀ったものだと推察されます。
「鯨神」では「寄り鯨」=「来訪神」ではないかと仮説がたてられています。
捕鯨というタブーに挑む
捕鯨に関しては国際社会から非難されていますし、鯨について日本人が語ることはタブーですよね。
だからこそ意欲的に鯨というテーマと向き合っていると感じました。
正直、鯨の肉なんて一般家庭のメニューにはありませんし、食べないから愛着もありません。
あんなにかわいい鯨やイルカを殺して食べるなんてと責められても、そもそも食肉と思っていないので返答に困るのです。
牛や豚がOKで鯨やイルカはダメ?
大いに疑問を感じる点ですが、子どもに聞かれたら何と答えたら良いのやら……。
ほぴっとんは農業奴隷でしたから、幼い頃から野菜やみかんを育てています。
野菜なんてどれだけ害虫を殺したかが勝負ですよ。
農薬を使わずに〜などとあんぽんたんなことをいうヤツもいますが、野菜作りは土で決まります。
カエルやらミミズやらをチョンパせずに土を耕せるかな?
口では平等といっても命には優劣があります。
捕鯨は日本の伝統的な文化ですが、現代の動物愛護の精神からみると非道な行いとされます。
「鯨神」のラスト3ページは刮目して読まねばなりません。
これらのことを、我々現代人がどのように受け止めて未来に伝えていくか、非常に考えさせられる作品となっています。
神南火
神南火 – 忌部神奈・女の神話シリーズ は単行本全1巻で出版されています。
神南火(かむなび)は「宗像教授異考録」のスピンオフで忌部捷一郎の妹である忌部神奈(いみべ かな)が主人公。
この神奈は異色の経歴で女性史研究家、神木研究家、温泉評論家などの肩書きを持ったショートカットが麗しい女性です。
前後編からなる表題作「神南火」が面白い!
天孫降臨神話の木花開耶姫は出産の時になぜ産屋に火を放ったのか?
日本神話における「火中出産」を軸に「カムナビ」の謎を追う!
神奈はフットワークが軽く謎を見つけたら日本全国を飛び回るところがかっこいい。
神話や伝承にでてくる女神や姫たちの秘められた真実を、同じ女性である神奈が解き明かしていくストーリーだが、展開はかなりハードボイルドでぬるくない。
神南火は「宗像教授異考録」と同じようなテーマを扱いながらも、女性にスポットを当てた作品となっています。
残念ですが、宗像教授は登場しません。
まとめ
「宗像教授異考録」にてよりオカルト色をまして復活してくださって感謝の限りです。
全15巻で完結などともったいないことを言わず、ぜひ星野先生のライフワークとしていただきたい。
ネタ集めに苦心されると思いますが、ファンは待っていますよ!