「夏目友人帳」は緑川ゆき先生による作品。祖母の遺品「友人帳」を巡る少年と妖の交流を描いた成長物語。
ネコ好きでなくともニャンコ先生のキュートさに悶絶必至!
あらすじ
両親を亡くし身寄りがない夏目貴志は遠縁の藤原夫妻に引き取られることになったが、彼は妖怪と呼ばれるものの類を見ることができた。
祖母・夏目レイコの遺品である「友人帳」を手にしたことをきっかけに自称用心棒・ニャンコ先生とともに妖へ名を返す日々が始まる……。
友人帳とは?
夏目貴志の祖母であるレイコは強い霊力を持っていて、片っ端から妖にケンカをふっかけてはいびり倒し、負けた方が子分になるという約束をして紙に名前を書かせた。
名前を書かせた契約書の束は「友人帳」と呼ばれ貴志に引き継がれるが、名を呼ばれたら逆らえない妖怪たちは名前を返せと言い寄ってくるのだ。
「友人帳」の持ち主は名を書かれた妖を使役することもできるため「友人帳」を狙う妖やレイコに恨みを持つ妖から身を守らなければならない。
返還希望の妖に名前を返すとドッと疲弊するため、「友人帳」は結構難儀な代物である。
夏目貴志は不幸か?
ほぴっとん本当に良かったと思っているのですよ。霊的な事象と無縁でいられて……。
つい可哀相だと同情心が湧きますが、夏目貴志は本当に不幸な少年なのだろうか?
ほぴっとんなりに結論を出してみました。
夏目貴志が孤独なワケ
「夏目友人帳」の主人公・夏目貴志は子どもの頃から妙なモノが見えて、しかもやたらと絡まれるという(見たくて見ているわけではないのに)なんとも不幸な体質の少年です。
急に妖に驚かされたり追い回されたり、端から見るとかなり挙動不審な人物だ。
そのため、幼くして両親を亡くしているにも関わらず、親戚の家をたらい回しにされていました。
まあ、薄気味の悪さは否めない……。
「夏目友人帳」の世界では普通の人に妖は見えません。
貴志は霊的に格が高いので妖と人の区別がつかないぐらいはっきり見えてしまいます。
だから周囲と不協和音を生じます。
「あっ、お客様が来てる。よーしポイント稼ぐぞ!」
いそいそ皿をお出ししたら「3枚でいいのよ」ってツッコまれて「エッ?あの人の分は……?」
「さては貴様あやかしだな!」
こんなことが貴志の日常なのです。
それゆえ他人と距離を置き、孤独の中に生きています。
友人帳を受け継いだら
いつものように妖怪に追い回されていた際に誤って封印を解いてしまった貴志は白い獣の妖怪・斑(まだら)と出会います。
斑から祖母のレイコと勘違いされた貴志は「友人帳」の存在を知り、自分が死んだら「友人帳」は斑のものと約束してブスな招き猫を依り代とした斑=ニャンコ先生を家に連れて帰ることになった。
この出会いで、ただただ忌避すべきものであった妖との関わり方に変化が表れます。
様々な妖たちは、道理が通じない輩であったり、今にも消えそうな儚い存在であったり、貴志を慕って集まる妖怪であったり、それらにまつわるストーリーが珠玉の一言。
名前を返すたびに流れ込んでくるレイコと妖たちとの記憶と繋がりが貴志に受け継がれていくのかと思うと幸せな気分になります。
友人たちとの関わり
孤独な幼少期を過ごした貴志に友人と呼べる存在はいませんでした。
転校を繰り返していますし、妖が見えることは誰にも秘密にしています。
しかし、同級生の田沼 要やタキに妖に対する悩みを分け合うと率先してトラブルを手助けしてくれる存在になりました。
祓い屋の名取 周一に出会ったことで「見える側」の人間とも関わりを持つことで貴志の世界が広がっていきます。
夏目貴志は幸福か?
別に霊的なものが見えても見えなくても人間関係なんて大変なものだ。
貴志と同じ世界が見えなくても理解してくれる友人なんて貴重。
大人になると真の友が1人もいないことなんて別に不思議ではないし珍しくもない。
そう考えると、ニャンコ先生をはじめヒノエや中級妖怪など貴志を構ってドンチャン騒ぎして酒盛りする妖の存在はもっと貴重。
貴志がオープンマインドで自分の環境を受け入れると世界は優しい……。
彼の瞳に映る世界はとても美しいに違いないし、そんな世界に生きる貴志は幸せだとほぴっとんは思います。
まとめ
ほぴっとんは穢れたどす黒い心を漂白剤でザバザバ洗濯したいのよ!
優しい藤原夫妻や友人たち、そして超個性豊かな妖たちに囲まれて貴志が過ごす緩やかな時間を大切に感じます。
この幸せがずっと続きますようにと願わずにはいられない作品。
ペンタッチも優しいですし、パソコン作業で血走った瞳を労ってくれます。
疲れた心をほぐしたい方にはぴったりの妖怪漫画。