少女漫画|松田奈緒子の少女マンガ愛が詰まったオムニバス漫画!

「少女漫画」は「重版出来!」の松田奈緒子先生による漫画。全1巻。

のちの「重版出来!」に繋がる漫画でもある「少女漫画」は誰もが知る少女マンガの名作に絡めたエピソードを集めたオムニバス作品5編と主人公・俵あんの少女マンガ道が描かれた「最終夜」の6編からなる連作集。

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少女漫画のあらすじ

「少女漫画」はデビューから5年がたつも、いまだに低空飛行を続けるマンガ家・俵あんの愚痴からスタートします。

・第一夜 ベルサイユのばら
・第二夜 ガラスの仮面
・第三夜 パタリロ!
・第四夜 あさきゆめみし
・第五夜 おしゃべり階段
・最終夜 少女漫画家たち

第一夜の「ベルサイユのばら」と第二夜の「ガラスの仮面」が面白かった。

第一夜 ベルサイユのばらのあらすじ

34歳の派遣社員・三沢勝子は大の少女マンガファン。就職難の時代であったため生活のために派遣社員となり、贅沢もせずに真面目に働くも正社員になれずにいた。ある日、新入社員の給料明細を拾ったことで、待遇の差にショックを受ける勝子。

そんな中、同じ派遣社員で「ベルサイユのばら」のファン・静田から「三沢さん オスカルの心 持ってるよ」と言われ、会社に搾取されている現実に気づき、労働環境に疑問を抱いた勝子は自分とオスカルを重ね合わせ、労働改善をすべく革命を起こそうと決意する……。

第二夜 ガラスの仮面のあらすじ

地位も名誉も財産も美貌も全て兼ね揃えた姫川亜弓同様、映画監督を父に、女優を母に持つ女子アナウンサーの万城目雅(まんじょうめ みやび)は、セレブアナとして新キャスターに抜擢されるも、「完璧すぎてつまらない。女子アナらしく笑っていればいい」との理由で降板させられる。

少女の頃、クラスで流行った「ガラスの仮面」。みんなは北島マヤを応援していたが、雅は血の滲むような努力をしてきた亜弓さんが好きだった。

インタビューひとつ満足に取れず気落ちする雅は、自分にないものを模索し始めるが……。

少女漫画の感想

やはり「少女漫画」は俵あんの物語だ。最終夜「少女漫画家たち」で描かれるあんの姿にほぴっとんも「ハッ!」と気づかされることが多く、反省する次第です。

あんの漫画は、画力が高くセンスは良いが、自分の価値観しか認めずドライを通り越して冷酷な作風(三沢勝子 評)。

実は、あん自身が既存の少女マンガを古臭いと小バカにしつつ、自分の作風に悩んでもいるのだが、青年誌で描いている新人の集いに参加した際に男のマンガ家から少女マンガを軽く扱われ、鋭く反論する。

なぜ男子諸君は少女マンガを読まないのか?

面白くないから読まないのではない。その理由が非常に的を得ている。

ここのシーンは「少女漫画」の中でもっとも心に刺さる場面なので、ぜひご自身の目で読んでみてほしい……。

出版業界に限らず世界全体にはびこる女の扱いに対する鋭い問いかけ!

ほぴっとんも「ああ、やっぱり女性作家さんだったか……」と思うことありますもん……。別に作家を性別で見ているわけでも少女マンガを下に見ているわけでもありませんが、男尊女卑って無意識的に女から女にも向けられるものだと気がつきました。

「少女漫画」はどの編も、主人公の女性が持つ価値観が少女マンガからの気づきによって立ち返る様子が描かれ、爽快なストーリーとなっています。

まとめ

名作漫画を良いエッセンスに加えた女性たちの奮闘記。少女マンガが好きな方だけではなく、漫画を愛する人に読んでほしい漫画!

第一夜「ベルサイユのばら」の主人公・三沢勝子の趣味ブログのマンガ評が地味に素晴らしい。参考にしよう……。

俵あんの担当として「重版出来!」の五百旗頭さんも登場しています。要チェックだ!