「亜人」は桜井画門先生による謎の亜人をテーマとした漫画。
ジャケのシャープなミイラ男が亜人だと思って購入。(違っていた)
死なないだけで外見上人間と変わらない亜人の存在がちょっとしたホラーな展開を見せるミステリーチックなバトル漫画だ。
あらすじ
「亜人」と呼ばれるその生物は「死なない」。
夏休みを間近に控えた高校生・永井圭は下校途中に交通事故に遭い即死するが、その直後に「亜人」として蘇生する。
「捕まったら死ぬまで研究される。死ぬまでっていつ!?」
追われる身となった永井は逃亡を図るが……。
亜人の魅力
ストーリー展開
17年前、アフリカの戦場で死なない人間が発見された。稀に人類の中に現れる決して死ぬことのない未知の新生物「亜人」。
この「亜人」なる輩は世界で46体、日本では2体確認されているが「死ななければわからない」ため、 実際はもっと多いと思われる。
亜人を発見・捕獲した場合は莫大な懸賞金が手に入るとの噂。
前振りとして、授業で亜人の勉強をしてからトラックにはねられる主人公の永井圭。
胴体がチョンパ状態なので、確実に即死認定だがすぐさま身体が再生する。
そこで、永井は自分が亜人であることを知るのだ……。
「研究・賞金・ステータス」「亜人は人間じゃない」
逃げねば、殺られる!(死なないけど)
永井は奇声を発して走り去り、友人のカイとともに逃走するが、政府や警察からの追跡が始まる。
そんな中、「帽子」と呼ばれる謎の男・佐藤ら亜人一派も永井に接触しようとするが……。
亜人の酷い設定
まず、「亜人」かどうかを確かめるには殺せばいい……。
生き返れば亜人ですね。
しかし、痛みはある……。
建前上、亜人は政府が保護しその管理下で生活しなければならない。
「ちょっと、かわいそうよね」という意見もあるが、内情は亜人で非人道的な研究を行なっているのだ!
(亜人を使って虐殺実験を行うとか、陰謀論者を奮い立たせる設定)
死なないけど痛みはある亜人に対しての暴挙に、「亜人は経済動物」との暴言……。
これらの地獄絵図を生んだ背景は、人間の未知への恐怖心と支配の覆りを恐れてのことに違いない。
死なない亜人に徒党を組まれたら、人類は太刀打ちできんよ……。
確実に亜人を殺す方法を熟知しておかないと不安でいっぱい。そりゃそうだ。
ついでに、利用してやれとの企みに亜人がいつまでも甘んじるはずもなく、能面顔の佐藤をリーダーに亜人側が反旗を翻す。
この構図が正義と真実は別物であるという人類の傲慢さが如実に現れていて、「亜人」のストーリーで一番面白いポイントだ!
亜人の戦い方
亜人を絶対的な不死者とした設定がほぴっとん好みで非常に良い。
戦い方に奥行きがある要因とみました!
それゆえ、死なない亜人特有の戦い方は斬新を通り越してヤンチャすぎる……。
死亡と蘇生を繰り返しながら特攻してくるとかホラーだ。
負傷する→自殺する→蘇生する。こんな戦い方をされたら、人間は手も足も出ない。
(シュルシュルって包帯巻き直すように復活するところがナイスアイデア)
また、「黒い幽霊」(通称IBM)と呼ばれる亜人の分身のようなミイラ男を駆使して戦う点も新鮮。
亜人同士でないと目視できないし、自分でコントロールできなかったりかなり不安定な存在である「黒い幽霊」が物語のキーパーソン?だろう……。
永井派・佐藤派
「亜人」は初読だと「まぁ、グロめなのに淡白な漫画ですな」との感想。
おそらく、主人公の永井圭がドライな性格だからかもしれんが……。
あまり永井に感情移入できないなと思っていたら、巻を重ねるごとに佐藤がまんざらではなく思えてきてしまった……。
佐藤は特にほぴっとんのタイプではない糸目のおっさんなのですが、もはや死亡職人と化した戦い方であったり、彼のバックボーンに触れるとつい興味を引かれてしまう。
おそらく、永井派・佐藤派と好みが分かれるだろう……。
(佐藤派は少数派かもしれんが…)
まとめ
「亜人」は不思議な漫画で、軽く読み飛ばそうと思えばさらっと読めてしまう話だ。
人類の支配欲の構図があまり前面に押し出されていないため、ストーリーの奥に潜む人間の本質的な恐怖をスルーしてしまう。
斬新なバトルにだけ目を向けるとライトに感じるし、淡々としすぎてありきたりな漫画だと思うかもしれん……。
「亜人に対する冷徹さの本質」や「なぜ戦うのか?」という点を哲学的にとらえるとヘビーな話に早変わり……。
よって、流し読みには不向きな漫画。
「寄生獣」にハマった経験がある方は絶対に「亜人」も好きだと思う。
なんども読み返すことを推奨する漫画だ!