「群青学舎」は「乱と灰色の世界」で知られる入江亜季先生によるファンタジー漫画。
読切連作集の漫画で全四巻と面白いうえに読みやすい。
「群青学舎」というタイトルだが、学校内の出来事が描かれているわけではありません。ごちゃまぜのファンタジーですね。こういう漫画は大好きだ!
群青学舎の見所
「群青学舎」は1話ごとに舞台はバラバラ、時代も明記なしです。
中世っぽい話もあれば、次の章は現代が舞台だったりします。
しかし、短編集なので違和感はありません。
なぜ「群青学舎」というタイトルなのか不思議ですが、カラー絵を見ると青の使い方が美しいですね。
テーマごとに柔らかさと鋭さのタッチに変化があり、非常に引き込まれる絵柄ですよ。
入江亜季先生は絵で読ませる漫画家です。
ほぴっとんは無駄巨乳はストーリーに邪魔なので不要論者ですが、群青学舎は別物。
女性的な曲線が非常に美麗で際立って世界観とマッチしています。
また、ちょっとした小物に至るまで半端ない描き込みがすごい。
にじみ出る絵の空気感がファンタジー向きで、ストーリーも短編で物足りないということはなく、しっかり描ききっています。
入江亜季先生はオールジャンルで勝負できる。(勝手に太鼓判)
群青学舎 おすすめの話
ほぴっとんはファンタジー馬鹿なので、中世っぽい話に好みが偏りましたが「北の十剣」「待宵姫は籠の中」「ピンク・チョコレート」がお気に入りです。
北の十剣
2巻は「北の十剣」のためにある。その1からその5まであります。
雪深い「 北の十剣王国」は年老いた国王が死んだ夜に、弟・クルトが兄・タイタスを討ち王座を手に入れる。そんな中、タイタスの娘で王女のグゼニアは城を落ち延びるも、クルトの息子・ルーサーに捕らえられるが……。
簒奪者の息子であるルーサーはグゼニアを殺すように命じられますが、どうしても実行できません。
ルーサーはグゼニアを殺せると思っていましたが、牢に横たわるグゼニアを見て「何をしているのか、俺にもわからん」と言って逃亡を幇助。
実はこの2人密かに思い合っていたのです。
美しく周りからも慕われるグゼニアを危険視したクルトは次々と追っ手を差し向けます。
命を狙われるグゼニア。さあルーサーはどうする?
我らは守るべき姫君を失いましたが……
仕えるべき主を見つけたのです
我らの剣をお預けいたします
入江亜季 エンターブレイン 群青学舎 2巻より引用
雪が降りしきる中、王都を目指すグゼニアの決意に命をかける主従の姿をアフターストーリーのたった2ページでさらりと描き切る技量。
やっぱり、入江亜季先生はすごいわ!
待宵姫は籠の中
3巻は「待宵姫は籠の中」のためにある。前中後編からなります。
花嫁行列の最中に山賊に襲われさらわれた待宵姫。親分のマミジロは乱暴な男だったが……。
美しいものに目がないマミジロに嫁目的で連れ去られ軟禁されてしまった待宵姫。
待宵姫が飲まず食わずで抵抗したため、無理矢理食べさせようと胸ぐらを掴んでいるところを母ちゃんに激ギレされたマミジロ。
開けられた檻から外の世界に出た待宵姫が見たものとは?
待宵姫は蚱蟬王国からトベラ共和国に輿入れする最中でしたが、相手はじじいです。
蚱蟬王国は女性が美しいことで有名で、政略結婚さながら高値で売りつけるために従順に躾けられます。
待宵姫はマミジロに出会い世界に触れることで、自分が何一つ知らずに生きていることに気付く。
そして、自分の意思で国を出るために、待宵姫は蚱蟬へ戻る決意をする……。
蚱蟬(なわせみ)って鳴かないセミのことなのですよ。ミーンミーン。
国名からしてひねりが効いていますよ。「待宵姫は籠の中」は。
待宵姫でなくともマミジロ親分には惚れるわ!
こういうファンタジーが読みたかった。本当にGood Jobな漫画!
ピンク・チョコレート
1巻から連作となっている「ピンク・チョコレート」は4巻で完成します。
惚れ薬の研究をしている教授から実験のためにピンク・チョコレートを食べさせられた春日と都。
酒に酔ったように理性をなくす2人だが、薬の効き目が切れてもお互いを意識するようになり……。
実直な春日とぐうたらな都(化けると美しい)の恋の行方は?
かわいらしいお話の中に笑いあり感動あり。スカッと爽快感のある話です。
また、最終巻にはグゼニアや待宵姫など、これまでの作品のアフターストーリーが巻末に収録されていて見逃せない!
まとめ
様々なテーマのファンタジーがてんこ盛りの「群青学舎」は、おそらくほぴっとんが一番読み返している漫画だ。
何度読んでも飽きないうえに、どの話もハズレなしに読ませてくれる。
本当は全話ご紹介したいぐらいですよ。全4巻ですが10巻分ぐらいの内容が凝縮された傑作です。
1巻の第4話、「花と騎士」なんて絶品!
人質にするために隣国の王女・ユリアナを捕らえるも、我こそがユリアナであると5人全員が名乗りをあげる話。
「私がユリアナよ!」とお互い言い合うだけの話なのに、まさかそう落とすとは……。
「群青学舎」は形の違う感動が詰まった読んで損はしない漫画!まずは1巻から読むべし!