「日出処の天子」「舞姫 テレプシコーラ」で知られる山岸凉子先生が描くジャンヌ・ダルクとは?
「レベレーション」は大天使ミカエルの声に導かれフランスの救世主となるも、魔女の汚名を着せられて火刑に処された少女の生涯を描いた漫画だ。
山岸凉子作品を制覇しているほぴっとんが待ち望んだヨーロッパの歴史モノ。
あらすじ
「わたしは解放される。疑ってはならない」
異端者として処刑を宣告されたジャンヌ・ダルクは、火刑台へ連行されながら初めて神の「声」を受けた「あの日」のことを思い出していた……。
レベレーションの魅力
あどけない少女が憔悴しきって歩む処刑台。救国の英雄となり「オルレアンの乙女」と呼ばれたジャンヌ・ダルクの数奇な運命。変化する彼女の心情に注目だ!
ストーリー展開
のどかな農村で暮らす13歳の少女・ジャンヌが聞いた「声」とは?
「レベレーション –啓示–」とのタイトルに沿ったストーリーだ。
ジャンヌ(ジャネット)が神の御使いとおぼしき存在から与えられた天啓。それは一体何であったのか?ということに焦点を当てて描かれている漫画です。
啓示というのは人智を超えた真理を超自然的な存在を介して伝えられるもので、まあ本当のところよくわかっていない……。
ジャンヌが生きた15世紀のフランスは王位継承権に端を発した「百年戦争」の真っ只中で、フランス王家とイギリス王家の争いが激化した頃。
しかも、フランス国内でも2人の王を抱く分裂状態にあり、平和に暮らしていたジャンヌたちの足元に戦争の暗い影が忍び寄ってくるのだ。
そんなある日、ジャンヌは光に包まれ「声」を全身に浴びるという経験をする。
頭が変になったのか?と恐怖を感じ誰にもその出来事を話さなかったが、「フランスに行って、王を助けよ」という明確な啓示を受けたジャンヌはその一歩を踏み出すこととなる……。
果たして天啓であったのか?
ジャンヌが見たものとは一体何だったのか?
ほぴっとんはいつでも神風特攻に志願する準備ができているのですが、精神的にクリアできても物理的に零戦の操縦ができるか?といえば無理でしょうな……。原付バイクにも乗れないのにね。
この辺りは自分の意思とは無関係でしょう。
ジャンヌは農民の娘ですから学がなく読み書きなどもできませんでした。
そんな彼女が、いきなり軍を率いたりできるものなのでしょうか?
しかも、女の人の地位が家畜と同等だった時代に、彼女に黙って従う男性っていたのでしょうか?
やはり、霊的なアシストがなければ不可能なのでは?と思ってしまいます。
ジャンヌは信仰心の強い少女で、彼女が神の愛を信じていたことは確かです。ですから啓示を受けたと噓をつく理由がありません。大人しく村に引っ込んでいればいいだけの話ですしね。
幻覚や幻想の可能性もありますが、それだけではオルレアンを解放することは不可能ですし、ジャンヌ・ダルクを語る上でもっとも興味を引くポイントであります。
ジャンヌが神からの啓示がなければ困難な状況を打破したことから神がかり的な何かを持っていたのでは?と思わせるところが、現代でもジャンヌが国民的ヒロインとして愛される所以だろう。
ジャンヌ・ダルクの末路ついて
そんなジャンヌですが、異端認定され生きながら火あぶりに処されるという処刑の中でも群を抜いて酷たらしい刑で、絞首刑ののち火刑という「温情」も与えられずちょびちょび黒焦げになるまで焼かれ、灰をセーヌ川へ流されました。
しかも理由が、男装=異端って……。
なんじゃそら?神の声を聞いたかどうか?正直どうでも良いのですよ。イギリス側からしたら……。死んでくれればそれで万事OKなワケで、ジャンヌを戦犯として死刑にしたら同じことをやり返されますから異端として処刑すれば文句は言われないと……。
「シャルル7世は助けにこんのかい!」とみんなツッコむでしょうね。
ジャンヌの処刑は徹底されて苛烈なものとなったという史実の中、どう「啓示」と絡めてくるかがワクワクするポイント!
アンハッピーなまま終えるのか?それとも神秘的なカタルシスが待っているのか?
早くもクライマックスが楽しみすぎる漫画だ。
愛ゆえに無茶なお願い
ちょいちょい山岸凉子先生の心の声が漏れている点がいただけなかった……。もちろん作中の史実の補足説明なので読者の理解を深めるために足したい気持ちはわかるのですが、ページをめくる手が止まってしまいテンポが悪くなってしまった。
「レベレーション」を描くにあたって非常に勉強されたことが伝わってきますし、山岸凉子先生作品を読めるだけで幸せなのですが、当時の社会背景や生活習慣などは巻末に補足としてまとめてくれるとありがたかったです。
しかし、山岸凉子先生のお手を煩わせることなど決してあってはならぬ……。
そういったことはその辺の有識者にやらせればよろしかろう。
だからといって、山岸凉子先生の愛猫コバン日記をはしょってくれるなよ!
山岸凉子愛ゆえに無茶な難癖をつけてしまいましたが、「レベレーション」の魅力が損なわれてはおりませんのでご安心を……。
まとめ
狂気を孕んだ神がかり的な人間の本性を描かせたら天下一品の山岸凉子先生ですから、ストーリーは間違いがないでしょう。
史実をなぞって終わりとはなりませんよ。政治的な思惑に絡めて人間のドス黒い欲望を描いてくれるはず……。
また、神が与えた受難を全うしたジャンヌの見る神の愛をどう描写するのか?
「レベレーション」ならではの解釈に期待しています。
まだまだ、序章ですから疑問符が多い感想となってしまった……。