「エマ」よりも面白い!「Under the Rose」あらすじと感想

Under the Rose アンダー ザ ローズ」船戸明里先生による伯爵邸を舞台にお貴族様の家庭内事情が描かれた漫画。身分違いの恋を描いた「エマ」と同時代にイギリスの階級制度を背景としたロウランド家の愛憎劇。ほぴっとん的には「エマ」よりも「Under the Rose」が好みだ!

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Under the Rose

「冬の物語」から始まり「春の賛歌」へと続く物語。

冬の物語 あらすじ

19世紀英国。没落貴族である侯爵家の娘グレース・キングは愛人のロウランド伯爵邸で謎の死を遂げた。その後、キング侯爵家で育てられていたグレースの息子ライナスとロレンスは実の父親であるロウランド伯爵に引き取られともに暮らすこととなるが、ライナスは母の死にロウランドの家の人が関わっているのではないかと疑念を抱き、真相を究明しようとする……。

春の賛歌 あらすじ

アーサー・ロウランドは子供たちのために新しい家庭教師(ガヴァネス)レイチェル・ブレナンを伯爵邸に迎え入れた。清らかで美しいレイチェルを見た子供たちはなぜか彼女と打ち解けようとせず冷たい態度をとる。戸惑いながらも彼らと向き合おうとするレイチェルは、一見幸せな理想の家庭に見えたロウランド家の歪みを知るが……。

ストーリー展開

イギリスの貴族社会って清々しさとかけ離れた陰鬱そうなイメージがあるのはなぜですかね?気候ですか?

Under the Rose」はライナスロレンス兄弟が、母親が亡くなったためいきなりロウランド伯爵・アーサーに息子として迎え入れられるというのっけから重苦しい展開でスタートします。

ライナスはロウランド家に着くや否や、ロウランド家の兄弟たちと一悶着を起こし、なんの罪もない馬をぶっ殺すという暴挙。

腹違いの兄弟だがなんとかうまくやっていこうと歓迎の意味も込めた馬だったのに、好意を台無しにしてしまった……。

このライナスなる輩は11歳の少年にしては聡明だが没落した侯爵家で厳格な祖父から抑圧された教育を受けたためか、傲慢で攻撃的な性格をしており貴族意識の強さを持っているのだ。

そんなライナスは、母・グレースが妻子あるアーサー・ロウランド家に入り浸り妾となって不義の子である自分たちを生み棄てた、恥さらしの背徳者であることを受け入れがたいだろう。

なぜ、急に顔も見たことのない自分たちをアーサーが受け入れる気になったのか?

ライナスは周囲に反抗的な態度を取りながらグレースの死の真相を暴こうとするが、次第に母の心の闇を知っていく。 グレースを絶望の淵に追いやったのは誰なのか?

そして、「春の賛歌」から美人すぎる家庭教師・レイチェル・ブレナンが主人公となります。

牧師の娘であるレイチェルは敬虔な信仰心と道徳心を持つ女性。

アーサーに妾や庶子がいると知りショックを受けるが、アーサーの子供たちに対する愛が深いことから彼と正妻であるアンナの仲を取り持とうと奮闘する。

結果的に理想的な家庭像を押し付け、ロウランド家のいびつな均衡にヒビを入れてしまったレイチェル。

いったんこうなると、どうもこうもないのよ……。

子供たちのために良かれと思ってしでかしたレイチェルの行動によってロウランド家に根深くはびこる確執をゆり起こしてしまったのだ。

次々とロウランドの家族間の微妙な関係性が露呈し、ノンストップで瓦解していく恐ろしさ!

Under the Rose」はミステリーチックなストーリーに絡む愛憎劇に虜になる漫画だ。

エマよりもおすすめな理由

同じく19世紀のイギリスを舞台とした森薫先生の「エマ」よりもほぴっとんはUnder the Roseをおすすめする。

なぜなら、ヘビーな展開と濃密な心理描写に卓越した作品だからだ。ドロドロというよりは梅雨時期の曇天のようなジメジメ感が漂う重苦しいストーリー。それを美麗な絵で緻密に描いてくれています。

しかも、家族構成が乙!

人当たりの良さそうなおっさん・アーサーを主人とするロウランド家は、男だらけの8人兄弟。

リッケンバッカー侯爵の娘であるアンナを母に、一癖ある長男・アルバート、アーサーそっくりな次男・ウィリアム、顔付きの違う三男・グレゴリー、料理好きな四男・アイザック

グレース・キングを母に、傲岸不遜な赤毛の五男・ライナス、やんちゃ盛り七男・ロレンス

マーガレット(マリー)・スタンリーを母に、穏やかな長身の六男・ヴィンセント、まだ子供の八男・ディック

あれ?グレースの子供が五男と七男で、 マリーの子供が六男と八男って、アーサー挟んでるやんけ!

やりおるな、アーサー!一気に金瓶梅の世界ですよ。

しかも、この登場人物それぞれが心に深い闇を抱えているのだから、重苦しくて当然。

次第に狂気を孕んでいく家族間の心理戦も巧みで、悶絶級の面白さだ!

もちろん「エマ」も超好きですけどね。だってヴィクトリア朝時代のイギリスなんて波乱ずくめじゃないですか。モロ階級社会の理不尽が描けるもってこいのテーマでしょう。

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まとめ

Under the Rose」の難点は、刊行ペースの遅さだが待つ甲斐のある素晴らしい漫画。

Under the Rose」は「秘密に・内緒で」という意味を含んでいるテーマにぴったりのタイトル。

また、「Under the Rose」に先立って発表された「ロウランド伯爵家」の物語Honey Roseもあり。

Honey Rose」は「春の賛歌」のおよそ十年後の世界を舞台に天涯孤独の少女・フィオナの元へ「腹違いの兄」と名乗る青年・ライナス・キングが現れる話。

Honey Rose」は今や、Kindleなどの電子書籍でしか読めません。

しかし、後日談ですので「Under the Rose」を読んでから「Honey Rose」を読んだ方が無難です。

まずは「Under the Rose」からどうぞ!!